デザイン思考で行こう!

Life will find a way, we'll find a way technology lives.

トヨタ自動車と西日本鉄道は、11月1日から福岡市およびその周辺地域において、トヨタが提供するmy routeというスマホアプリを使ったマルチモダールモビリティサービスの実証実験を始めると発表しました。このmy routeは、日本における初めての本格的なMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)と言えるものではないでしょうか。

トヨタが本格的なMaaSを小さく始めたわけ→Wedge Infinityへ
 

トヨタはソフトバンクと提携し、「MONET Technologies」 という会社を設立します。MONETは、クルマや人の移動などに関するさまざまなデータを活用することによって、需要と供給を最適化し、移動における社会課題の解決や新たな価値創造を可能にする、未来のMaaS事業を行うとのことです。
2020年代半ばまでには、移動、物流、物販など多目的に活用できるトヨタのモビリティサービス専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette(イーパレット)」による「Autono-MaaS」事業を展開します。(プレスリリースより)
トヨタは昨年の9月に、トヨタにおける自動運転への取り組みをまとめた『自動運転白書』を発表しています。その中に「多くの人々にとって、クルマは電車や飛行機などと同じ、移動、あるいは輸送の手段かもしれません。しかし、トヨタは、クルマはそれらとは異なった、別格の存在だと考えています」という記述があります。これは、トヨタの自動運転への取り組みの根底にある考え方のようです。

「クルマは所有するもの」だから「別格の存在」だということです。それは、ユーザーがクルマを所有しないでモビリティサービスを利用するというMaaSの概念と矛盾するものです。では、プレスリリースにあるAutonomous Vehicle(自動運転車)とMaaS(Mobility-as-a-Service)を融合させたダジャレのような「Autono-MaaS」とはどのようなものでしょうか。

ダジャレに見えるトヨタのホンネ → Wedge Infinityへ 

トヨタ自動車とソフトバンクは、新会社「MONET」を設立し、移動における社会課題の解決や新たな価値創造を可能にする未来のMaaS事業を開始すると発表しました(10月4日)。

年初のCES2018で、豊田社長は「私はトヨタを、クルマ会社を超え、人々の様々な移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革することを決意しました」と宣言し、これまでユーザーが購入して所有していたハードウェア(自動車)をサービスとして利用できるよう(ハードウェア・アズ・ア・サービス)にするための、モビリティサービスプラットフォームという構想を発表しています。

今回の提携にも、マイカー時代の終焉の訪れを覚悟した豊田社長の決意が表れているようです。そのモビリティサービスとMaaSについて考えてみました。

トヨタはマイカー時代の終焉の訪れを覚悟したのか? →  Wedge Infinityへ

ここ2ヶ月ほど、中国のスタートアップの日本での事業展開について相談に乗っています。まだ、その詳細は書けませんが、その調査を行いつつ、いろいろな可能性を考えるのが面白くて、このブログやWedgeのコラムを書く時間の余裕がまったくありませんでした。

"Life, uh... finds a way"

映画『ジュラシックパーク』の中で、ジェフ・ゴールドブラム演じる、カオス理論を提唱する数学者イアン・マルカム博士の、確か、字幕では「生命は必ず道を見つける」というセリフです。

Henry Wu: You're implying that a group composed entirely of female animals will... breed?
Dr. Ian Malcolm: No. I'm, I'm simply saying that life, uh... finds a way.

ジュラシック・パークで恐竜を再現した方法は、恐竜のDNAを取り出し、欠損した部分をカエルのDNAで補うというものでした。科学者のウーは、繁殖を防ぐために、ホルモンを調整してメスしか生まれないようにしていると説明します。それを聞いたマルコム博士は、「生命は押さえつけられなどしない」と主張します。それが正しいことは、後で森の中で孵化したタマゴの殻が見つかったことで証明されます。

Life will find a way, we'll find a way technology lives.

これは、私の今年の名刺に記した言葉です。生命は自ら生きる道を見つけることができるかもしれませんが、新しい技術は、誰かが生きる(活かす)道を見つける必要があります。

そのスタートアップからの依頼は、新しい技術を使った製品のマーケティング、想定するアプリケーション市場の調査でした。しかし、その製品は、まさに技術そのもので、それを応用した最終製品や、さらにその最終製品を使ったサービス(事業)は、これから開発されるだろうという段階でした。その技術が生きる道を、まだ誰も見出していないのです。

私たちは、何らかのニーズを満たすための手段として製品やサービスを利用しています。しかし、そのニーズは、その時点で利用可能な製品やサービスによって、無意識のうちに狭められる形で適合させられています。その市場の製品やサービスを、新しい技術によって再定義して新たな手段を提供すれば、そこに潜在しているニーズ(顧客が諦めていること)を顕在化することができると信じています。

その「新たな手段」の、シーズ起点でのコンセプトデザインです。面白くないはずがありません。それが形になるかは、まだわかりませんが、しばらくしたら、ここでご紹介したいと思います。



グーグル傘下のウェイモ(Waymo)は、米アリゾナ州フェニックスで、「early rider program」と呼ばれる無人タクシーの走行試験を続けている。プログラムに登録した世帯の住民は、日常的に無人タクシーを利用することができる。今年3月からは、万が一に備えたセーフティドライバーが搭乗しない、完全な無人タクシーが運行している。無人タクシーは現実のものとなりつつある。

DeNAと日産自動車は、3月に横浜のみなとみらい地区で、2週間の実証実験を行った。セーフティドライバーが搭乗する自動運転車に、一般モニターを乗せて短いコースを往復した。DeNAは2015年5月に、ロボットの開発・販売を手がけるベンチャー企業のZMPと合弁会社「ロボットタクシー」を設立して、実証実験やデモンストレーションを実施してきた。今年になって、その関係を解消し、新たに日産自動車と「Easy Ride」という無人タクシーのプロジェクトを開始した。

『無人タクシーで日本が失うものとは?(Wedge Infinity)』より抜粋
Easy Rideのコンセプトムービーでは、無人タクシーが外国人観光客と英語で会話して、お勧めのスポットを提案したり、高齢者のドライブや子供の送迎に利用されたりするシーンが描かれている。しかし、無人タクシーが提供しようとしている価値は、このコンセプトムービーで説明されているようなものではないだろう。



競争の軸

デジタルカメラが生まれてから、カメラメーカーは画質の向上や性能の改善や機能の追加を行ってきた。それらは、初めは顧客価値に直結するものであったが、いつの間にか、顧客価値を無視したカメラメーカー間のスペックの競争になってしまっていた。

常に携帯されるスマートフォンのカメラは、目の前の出来事を撮って、すぐに誰かと共有することができるという新しい顧客価値を提供した。「撮って共有する」ことができるカメラは、これまでのデジタルカメラ(特にコンデジ)のユーザーのほとんどを取り込んでしまっただけでなく、それまでカメラを使わなかった人々をも巻き込んで、巨大な市場を創造した。

それまでのカメラメーカー間の競争の軸で、いくら性能や機能を向上させても、「撮って共有する」ことができないデジタルカメラは、「撮って共有する」ためのカメラという新しい軸の競争に参加することすらできない。

今年になって、これまで「2キロ730円」だった首都圏のタクシーの初乗り運賃が、「1.052キロ410円」に値下げされた。シェアリング・エコノミーと自動運転技術の発達で、タクシーが無人化されるかもしれないという、タクシー業界の危機感の表れと見る向きもある。しかし、それでは不十分だ。

これまでタクシー業界は、国土交通省による、運賃とタクシー台数の規制に守られて利益を確保してきた。サービスの質の向上や、利用しやすさ、価格面などでの需要喚起の努力を怠ってきたと言っても構わないだろう。配車アプリにも横並びの対応で、どのアプリ、どのタクシーを利用しても大した差はない。そこには明確な競争の軸が存在していない。

無人タクシーは:
  • これまでのタクシー利用者の利用頻度を上げる
  • 社用や業務用以外の私用の利用者を増やす
  • これまでにタクシーを利用しなかった人が利用する
  • バスなどの代替えとして利用する
  • 自家用車による日常の外出を代替する
ものになり、巨大な市場を創造するだろう。そこに「顧客価値」と「戦略価格」という新たな競争の軸が生まれる。それは、同時に既存の(タクシー産業だけでない)いろいろなビジネスが破壊され、再構築されること(デジタルディスラプションが起こる)を意味する。もちろん、DeNAはとっくに気が付いているはずだ。コンセプトムービーでは、国やタクシー業界への配慮(忖度)から本音を描くことはできないのだろう。

日本での無人タクシーは、安全性や責任の問題などの「理由」で、はじめは非常に限定された条件下でしか認可されないだろう。しかし、ユーザーの理解を得て味方につければ、タクシーの無人化という大きな流れを止めることはできないはずだ。アマゾン(Eコマース)や音楽の配信サービスのように。
安全な移動が可能だという大前提で、便利(どこにでもすぐ来る)で安ければ、顧客が無人タクシーを利用する価値がある。そのため、無人タクシーの会社は大量の自動運転車を所有する必要がある。

さらに、配車システムが需要予測や効率的な配車を行って、すべての車両の稼働(実車)率を最大化しなければならない。「大量の自動運転車」と「高度な配車システム」、この二つが無人タクシーのビジネスを制する鍵となる。
無人タクシーのビジネスにも、ネットワーク外部性がある。「大量の自動運転車」と「高度な配車システム」を備えたサービスにユーザーが集中し、それによって「大量の自動運転車」と「高度な配車システム」がさらに強化されて行く。ユーザーが少ない他のサービスに乗り換える理由がなくなり、勝者総取りになる可能性が高い。

タクシー産業は国の保護を頼りに、横並びの施策だけで、ただ破壊されるのを待つのだろうか。すぐに、新しい競争軸へのシフトを始めるべきだろう。

お問い合わせやご相談は、contact に @ibornb.red をつけたアドレスまで

川手恭輔(Internet Born & Bred)

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