デザイン思考で行こう!

Life will find a way, we'll find a way technology lives.

世界の株式市場が不安定になってきています。これまでアメリカの株高を牽引してきたグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどが、技術革新による成長力を失ってしまったのではないかという不安が広まり、夏を過ぎてから主要なIT株が軒並み下落傾向にあります。いわゆる「弱気相場入り」し、当面の間は株価上昇が期待できないという観測もあります。

さらに、米中貿易摩擦による景気減速の懸念に加え、トランプ米大統領の政権運営の不安定さが、投資家の動揺を招いています。一般的に株価は6ヶ月から一年先の景気の先行指標であると言われていますので、今後の景気の悪化を暗示しているように思います。

トランプ大統領が掲げるアメリカ第一主義の政策は、一時的にアメリカを豊かにするかもしれませんが、貿易の自由化に逆行する関税引き上げはアメリカの市場の魅力をそぎ、中国との報復関税合戦はお互いの輸出を制限することになります。これらは世界経済に深刻な影響を及ぼし、結果的にはブーメランのように跳ね返り、アメリカの景気は悪化するのではないでしょうか。当然、日本の景気も風邪をひくことは避けられません。

リーマンショックという誰も予測できなかった衝撃によって、世界的な景気の低迷や円高などが引き起こされ、グローバルな競争力を失ったパソコンやテレビ事業などの業績悪化によって経営不振に陥った日本のコンシューマエレクトロニクス産業のメーカーは、事業の売却や撤退、そして大規模な人員削減などのリストラを繰り返した結果、ようやく回復の兆しが見え始めました。しかし、次の予測不能な衝撃への備えはできたのでしょうか。あるいは再び「想定外だった」と、業績悪化とリストラを繰り返すことになるのでしょうか。
カメラはピーク時から80%減少しましたが、まだ落ち込むでしょう。キヤノンはカメラ業界でトップですが、トップのまま市場とともに沈み続けています。(中略)コンシューマやハイアマチュア向け市場の部分がどれほど残るかは、見えない。確実に残るプロ市場以外は、10年後などの将来には素人向けのカメラ市場は消滅し全部スマートフォンに置き換わる可能性も高いと思っています。
これは、週刊ダイヤモンド新年合併特大号に掲載されたキヤノンの御手洗会長兼CEOの言葉です。フィルム時代からカメラの盟主であったキヤノンが、プロ市場以外のカメラ市場がスマートフォンによって消滅するという見通しを示したことに驚きました。

デジタルカメラは、カシオやパナソニックの新規参入組の電機メーカーが先行しました。それまでパソコンへの画像入力デバイスとしてデジタルカメラの開発に取り組んでいたキヤノンは、フィルムカメラ事業のリソースをデジタルカメラに集中し、2000年に発売したIXYデジタルを大ヒットさせてイノベーションに成功しました。しかし、そのキヤノンはスマートフォンの時代に「革新的な技術を導入して製品を再定義する」ことを諦めてしまったのでしょうか。

デジタル時代になって、特にコンシューマエレクトロニクス産業で、ひとつの事業ドメインにおいてインクリメンタルな技術の進歩による製品開発を繰り返すだけでは、長期的な事業の成長を維持していくことが困難になりました。企業は、ヽ弯慧な技術を導入して製品を再定義するか、⊆社の保有技術を応用した新しい製品によって新しい事業ドメインに進出するか、のいずれかの事業戦略によってイノベーションへの挑戦を続けなければなりません。

イノベーションによって誕生したデジタルカメラも、インクリメンタルな技術進歩で高性能化と高機能化を続けてきました。この期間は、社員は可能な限りベストを尽くし物事を「実践」します。既に習得したことに集中し、失敗を最小限にしようとします。しかし、「実践」だけを続けていると、社員は既知の範囲から出て、リスクのある新しいことに挑戦しようとはしなくなります。これは、日本のコンシューマエレクトロニクス産業全体に言えることではないでしょうか。チコちゃんに叱られます。

もっと深刻なことは、もしイノベーションに取り組もうとする社員がいても、「実践」だけでは、イノベーションに必要な「学習」をすることができないということです。「実践」の目的は成功であり、「学習」はリスクを恐れずに「失敗から学ぶ」ことですから両立することはできません。仕事でもスポーツでも、新しい目標に挑戦するには、そのための専門的なトレーニングが必要です。イノベーションにも、そのためのスキルを磨くための「学習」が必要です。

いくつかのメーカーでは、「社員のアイデアを素早く商品化して小ロット生産で市場に出し、顧客の声を聞きながら完成度を増す」という、エリック・リースの『リーンスタートアップ』の考え方を採り入れた取り組みが行われています。しかし、リーンスタートアップの本質は、早く失敗すること、製品がダメなものであることを資金を使い果たす前に知り、その失敗から学ぶことであり、成功するための方法論ではありません。

失敗から学ぶためには、失敗することを恐れずに享受するという気持ちがなければなりません。それは成長思考(グロースマインドセット)と呼ばれます。しかし、「社員のアイデアを素早く商品化して小ロット生産で市場に出した」あと、商品が売れなければ、社員は常にストレスを感じることになります。気づかぬうちに学ぶことは、失敗できないということです。失敗を受け入れて検証せずに失敗を拒絶したり、学びのきっかけとなる探究的な思考を促さず視野の狭い答を求めたりするのであれば、到底、失敗から学ぶことはできません。

「学習」では、各自が能力を個々のスキルに分解し、特定のスキルの上達を目指す必要があります。多くの時間と努力が必要ですから、自分にとって大切な目標がなければなりません。そして、どのように上達するのか、そのために何をするのかというアイデアが必要です。「学習」でスキルの構築を行い、そのスキルを「実践」で活用します。「学習」の過程を具体化することで、「実践」の自信に繋がります。「実践」では、次の「学習」で何に焦点を当てるのかを特定するための情報を蓄積します。

「社員のアイデアを素早く商品化して小ロット生産で市場に出し、顧客の声を聞きながら完成度を増す」という取り組みが「学習」の場として社内で共有され、社員が意図的に「実践」と「学習」を行き来するようになり、それによって成長思考が醸成されて、日本のコンシューマエレクトロニクス産業から次々とイノベーションが生まれるようになることを期待したいと思います。

大阪万博の会場予定地となっている大阪湾に浮かぶ人工島「夢洲(ゆめしま)」は、情報通信産業などを集積した「新都心」とする構想のもと大阪市が1977年から埋め立てを始めましたが、バブル経済の崩壊で、今でも広大な空き地が広がっています。

この夢洲に自動運転の「レベル4」の専用道路を敷けば、日本が遅れをとっている自動運転による新しいモビリティサービスの開発を一気に加速できるのではないでしょうか。

万博で日本のロボットタクシーの起死回生を!-> Wedge Infinity
 

最近、メディアで話題になるMaaSは、SNSやスマートフォンのように、大きな利益を生み出すことが期待される事業のプラットフォームとして、多くの企業が競って開発に取り組んでいます。
 
しかし、利益目的だけのMaaSは、交通問題や環境問題を解決できないばかりでなく、交通システムの地域格差を拡大させてしまいます。MaaSといえば、すぐに「ビッグデータを収集して...」という言葉が出てきますが、私は強い違和感を感じています。それは、日本全体の経済活性化と社会問題の解決の両方を可能にするものであって欲しいと思います。
MaaS
MaaSは、プラットフォームに過ぎません。アプリがなければスマートフォンに価値がないように、モビリティサービス があってこそのMaaSです。MaaSの前に考えるべきことがあるはずです。

交通革命の前に必要な公共交通のあり方 -> Wedge Infinityへ

「技術が生きる道を見つける」というエントリーで次のように書きました。
ここ2ヶ月ほど、中国のスタートアップの日本での事業展開について相談に乗っています。まだ、その詳細は書けませんが、その調査を行いつつ、いろいろな可能性を考えるのが面白くて...それが形になるかは、まだわかりませんが、しばらくしたら、ここでご紹介したいと思います。
中国のスタートアップと書きましたが、PerceptInは、コンピュータエンジニアリングの博士号を持つShaoshan Liuによって、2016年3月にシリコンバレーで創業されたコンピュータビジョンのスタートアップです。自動運転車や自律走行ロボットのためのプロダクトとソリューションを提供しています。

一般的に、自動運転にはLiDARなど、非常に高価なセンシングとコンピューティングハードウェアが必要ですが、独自のセンサー融合技術を駆使したコンピュータビジョン「DragonFly」によって、車両全体のコストを大きく削減することができます。
DragonFly Car2
この「DragonFly」を搭載した小型の電動低速車両を使った新しいモビリティサービスの可能性について日本で半年ほど調査を行い、短距離移動(マイクロモビリティ)のサービスをデザインしました。 

その実現に向けて投資や協力を得るために、これから色々なイベントやプログラムに参加して行きますが、まず12月10日と11日に「ベルサール渋谷ファースト」で開催される、日本総研主催の「未来2019」というピッチイベントに登壇します。

12月10日 10:15 - 10:25 未来2019二次審査会でピッチ
12月10日 13:30 - 15:30 「未来Smart City Challenge 報告会」にて5分間のピッチ
12月10日、11日 終日 デモブース(A1)で製品とサービスの紹介

「未来Smart City Challenge」は、同じく日本総研が主催するまちづくりプログラムで、東京・豊洲と福岡・箱崎(九大跡地)での実証実験に向けた審査を通過しました。

普段、このブログなどでイノベーションやスタートアップについて偉そうなこと(?)を書いておりますが、どんな奴が...という冷やかしにでもお越しいただき、名刺交換などさせていただければと思います。もちろん、協業や投資のお話も大歓迎です。

よろしくお願いします
川手恭輔

イベントには事前の申し込み(無料)が必要です。
こちらから→未来2019 審査会概要

トヨタ自動車と西日本鉄道は、11月1日から福岡市およびその周辺地域において、トヨタが提供するmy routeというスマホアプリを使ったマルチモダールモビリティサービスの実証実験を始めると発表しました。このmy routeは、日本における初めての本格的なMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)と言えるものではないでしょうか。

トヨタが本格的なMaaSを小さく始めたわけ→Wedge Infinityへ
 

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