デザイン思考で行こう!

Life will find a way. Technology can't find the way by itself.

PerceptIn Japan合同会社(パーセプティン)は、羽田第1ゾーンスマートシティ推進協議会が推進する国土交通省スマートシティモデル事業(令和2年度先行モデルプロジェクト)の中で、羽田みらい開発株式会社株式会社マクニカが実施する自律走行低速電動カート走行実証実験において、自動運転プラットフォームを提供します。
8LSEV
 自律走行低速電動カート

また、BOLDLY株式会社(旧SBドライブ株式会社)では、自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」を、パーセプティンの自律走行低速電動カートと接続する事により、遠隔監視による安全な運行管理を行います。

この実証実験では、自律走行低速電動カートを活用した実証実験を通して、歩車混在環境化における移動ストレスの低減や回遊性の向上について効果を検証します。また、統合管制システムによるモビリティの遠隔監視の実証を合わせて行います。

<実証実験>
場所:HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)2階デッキ
期間:2020 年 9 月 18 日(金)~22 日(火)、24 日(木)~26 日(土) 2020 年 10 月 1 日(木)~3 日(土)、8 日(木)~10 日(土)  ※各日 10~12 時、13~17 時を予定
 
<パーセプティンの自動運転プラットフォーム>
パーセプティンは、公園や私有地、地方の中山間部の交通量の少ない公道などの限定されたエリアでの自動運転モビリティサービスの早期の実用化を目指し、LiDARや高精細3Dマップを使用しないビジュアルSLAMベースの、低コストの自動運転ソリューションを開発しました。パーセプティンの自動運転ソリューションには次のような特徴があります。
  • ローカリゼーション
    RTK GNSSの位置情報、そしてステレオカメラを用いたビジョンシステムと慣性測定ユニット(IMU)による視覚慣性オドメトリ(VIO)を統合することよって、正確かつ強靭なローカリゼーション(自己位置推定)を行います。​
  • パーセプション
    同時に、ビジョンシステムは独自の認識アルゴリズム(パーセプション)を実行して、障害物の正確な空間情報と意味(セマンティック)情報を抽出します。
  • マップシステム
    RTK GNSSによる車線情報と、そのトポロジを表すグラフベースのデータによって、既存のデジタルマップを拡張します。
パーセプティンの自動運転ソリューションは、LSEVやAGV、そしてロボットなどの低速の自律走行を実現します。今回の実証実験では、8人乗りの低速電動カートを使用します。
Platform
 自動運転プラットフォーム

クラウド上の自動運転車管理システム(FMS)は、複数の自動運転車両を制御し、A地点からB地点への移動を可能にします。DOLDLYの「Dispatcher」とは、この自動運転車管理システム(FMS)を介して接続します。

パーセプティンの自動運転プラットフォームによって、モビリティサービス事業者様は、オンデマンドバスやタクシーなど、地域のニーズに応じたさまざまな自動運転モビリティサービスを構築することができます。

<本件に関するお問い合わせ先>
PerceptIn Japan合同会社 川手恭輔
MAIL :PiJapan.info@perceptin.io
 


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我々が目指すスマートとは

スマートシティあるいはスマートモビリティのスマートとはなんでしょう。ウィーン工科大学のチームは、都市開発の6つの主要分野でヨーロッパの主要都市を評価しました。
  • Smart Economy(経済)
  • Smart Mobility(交通)
  • Smart Environment(環境)
  • Smart People(教育)
  • Smart Living(生活)
  • Smart Government(行政)
先端技術を駆使して、これらの分野でのインフラやサービスを向上させて、暮らしやすい都市を形成していくことがスマートシティの目指すところだと思います。

しかし、スマートシティへの関心は、都市の大規模な再開発という魅力的なビジネスが伴う場所に集まっています。ここでも地域格差が拡大してしまうのでしょうか。

規模にかかわらず、先進的な取り組みをしている地方の市や町の自治体や関連する組織は、これらのいくつかの、地域ごとにニーズや実施形態が異なる「スマート化」に取り組み、成果をあげています。しかし、スマートモビリティに関しては、その困難さの度合いが大きいのではないでしょうか。

スマートモビリティには、スマートフォンのアプリを使い、いろいろな交通手段を駆使して効率的に移動するといったイメージがあります。それにはある程度の情報リテラシーが必要です。そもそも、交通手段の選択肢すらない地域も少なくありません。また、交通手段には、シェアリングの自転車や、将来的には電動のキックスクーターなどが含まれると思いますが、それらを利用できない人や状況も多いと思います。

私たちが提供しようとしている、アフターコロナの地方の新しいスマートモビリティは、いわゆる「交通弱者」のためだけのものではありません。英語に"vulnerable"(バルネラブル)という形容詞があります。困っていたり、支えが必要だったりする「状態」を指すようです。誰もが一時的または永続的に「バルネラブルな状態」になる可能性があります。

私たちは、移動について「バルネラブルな状態」の人にも優しい モビリティがスマートモビリティではないかと考えています。

人々の当然の権利としての生活交通


コロナ禍によって、地方のモビリティは、さらに危機的な状況になることが予想されます。緊急事態宣言の対象が全国に広がったことにより、例えば、路線バスの輸送人員が大幅に減少しました。「人の移動を減らす」ことが、国家的な要請であるにもかかわらず、「人の移動を支えなければならない」地域公共交通として、減便や運休ができずに赤字が大幅に拡大しました。

地方の公共交通を担うバスやタクシーなどの民間事業者の事業継続が困難になった場合、地域単位で交通が止まるリスクがあり、特に高齢化が進む地方部においては「交通崩壊」が「社会崩壊」を招きかねません。アフターコロナでは、全国の地方で生活交通の再構築が必要になるでしょう。

私たちが実用化を目指している低速のEVを使用した自動運転のタクシーサービスMopi(モピ)は、地方の人々の(生活交通)、人々による(自律的な)、人々のための(持続可能な)新しいモビリティを提供します。

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Mopi には次のような特徴があります。
  • 低速:時速20km以下(通常は10km程度)での走行は、乗客だけでなく歩行者にも優しく共存が可能です。
  • EV:言うまでもなく、EVは環境に優しいモビリティです。
  • 自動運転:タクシーの運用コストの大部分を占めるドライバーの人件費を大幅に削減することができます。「AIが人の仕事を奪う」と言われますが、地方ではドライバー不足が深刻です。
  • 2人乗り:新しい生活様式では、乗り合いではなくパーソナルな移動手段のニーズが高まると思われます。
  • タクシー:必要なときに呼べば迎えにきて、目的地にまっすぐ行くことができます。この利便性は、使いものになる生活交通として非常に重要です。
参考までに、日本の自家用車稼働率は4%(年間20日)ほど、平均の乗員は1.3人、一回の走行距離は5km未満が69%、3km未満が44%の短距離です。
It is rather for us to be here dedicated to the great task remaining before us―that mobility of the people, by the people, for the people, shall not perish from rural areas.

私たちの前に残されている大事業に、ここで身を捧げるべきは、むしろ私たち自身ですーそれは、人々の、人々による、人々のためのモビリティを地方地域から消滅させないためです。
これはリンカーンのゲティスバーグの演説の有名な一説の一部を切り取り、「政治」を「モビリティ」に、「世界」を「地方地域」に変えたものです。これが Mopi の語源です。

"goverment of the people" の "of" について、「人々に由来する」という解釈があります。"mobility of the people" には、地方地域の人々に由来する、当然の権利としての「生活交通」という意味を持たせたつもりです。

上で「交通弱者」という表現を使いましたが、「弱者」は「強者」との対立軸で生まれる言葉です。それは、生活道路を低速で走行する自動運転の車両に対する社会的受容性の観点からも望ましいものではありません。より多くの人に、誰もが一時的または永続的に「バルネラブルな状態」になる可能性があるとの共通認識を持ち、その誰もが利用できる「人々の生活交通」の必要性を理解していただきたいと願う次第です。

官民ITS構想・ロードマップ

7月15日に、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が「官民ITS構想・ロードマップ」の2020年度版の案を発表しました。
2.2.1 地方部における将来課題とモビリティニーズ

【事業者視点】

人口減少や高齢化が進む中、トラックやバス、タクシーなどの移動・物流サービスの担い手の不足及び高齢化が深刻である。さらに、生活社会インフラや住宅が 散在しているため、積載率が低いトラックや乗車率の低い交通機関が運行するこ とになり、輸送効率が悪い。結果的に、人流・物流事業者の収益性が低下する中、 一層人材が集まらず、事業の継続が困難になる。
 
このため、散在する住宅や生活社会インフラへヒトやモノを効率的に輸送するサ ービスの提供が必要である。手段としては、既存のバスやタクシー等に限らず、自動運転バスや小型自動運転車、デマンド交通等の新たな技術やシステムを活用した新規のモビリティの導入も考慮しながら、輸送の効率化を図る必要がある。
自動運転に係る「移動サービス」のロードマップでは、混在空間(生活道路等)における低速の小型モビリティサービスは次のようになっています。

2020〜2022頃:遠隔操作及び監視 
  • 一ヶ所程度で遠隔操作及び監視有りの自動運転サービスを開始し、徐々に対象を拡大
  • 1:Nの遠隔操作及び監視を実施
2023〜2025頃:遠隔監視のみ
  • 数カ所で遠隔監視のみの自動運転サービスを開始し、徐々に対象を拡大
  • 1:Nの遠隔監視を実施
2026〜2030頃:遠隔監視のみ
  •  2025年度目処に十ヶ所以上で遠隔監視のみの自動運転が普及
  • 遠隔監視におけるN数を増加
コロナ禍で少し停滞しましたが、「2020〜2022頃」の目標の実現に向けた取り組みを再開・加速したいと思います。


 
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医学や感染症に関してはズブの素人ですが、SNSやテレビ報道(ワイドショー)などの雑多な情報を私なりに整理して考えてみました。

おそらく事実だと思えるたった二つのこと:
・夏になってもコロナウィルスは死に絶えない(季節性と呼ばれるインフルエンザウィルスも夏に生きていて流行することがある)
・人々の行動を制限することによって感染の拡大を抑えられる

これらが事実だとすると、行動制限が緩和または解除されると、再び感染が拡大し、「行動制限」「制限解除」が繰り返されることになります。武漢では都市閉鎖が解除されましたが、武漢内での新たな感染者の確認がされなくなったとしても、人々の行動が活発になり範囲が拡大すれば、再び感染が拡大するでしょう。他地域のウィルスが人と共に流入してきます。

「緊急事態宣言」は、これまでの「行動制限」の要請を強化するものです。それは諸外国の「行動制限」に比べて緩いという意見もありますが、「行動制限」は感染爆発による「医療崩壊」を防ぐことだけが期待効果でしょう。どんなに厳しい「行動制限」をしても「制限解除」すれば、再び「感染拡大」が始まるのではないでしょうか。

夏になって暑くなれば、コロナウィルスの感染力が弱まることは期待できそうです。それによって「感染拡大」のスピードが弱まり、「行動制限」までの時間が長く「制限解除」までの時間が短くなるかもしれません。

アビガンなどの「治療薬」によって患者の重症化を防ぎ、回復を促進して、早く退院させることができれば「医療崩壊」の危険性を大きく減らすことができるでしょう。しかし、ワクチンができなければ感染を防ぐことは非常に難しい。残念ながら、1ヶ月間の「緊急事態宣言」による「行動制限」だけで、数ヶ月前のような安心した生活に戻ることは期待できない。

・政府と自治体は「医療崩壊」と「経済崩壊」を招かないギリギリのレベルでの「行動制限」の要請を実施するしかない
・私たちはワクチンができるまで「感染拡大」「行動制限」「制限解除」が繰り返されることを覚悟する

ワクチンができるまで一年ぐらいはかかるようです。それは、人口の大多数が感染して抗体を持つようになるよりも早いでしょう。その時間を覚悟し、その時間をどのように費やすのか。自分にとって本当に大切なことは何か、あるいはその価値観を考え直す必要があるなぁと、しみじみ思った次第です。








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世界経済フォーラムが、マッキンゼー・アンド・カンパニーと連携して作成したレポート『Transforming Rural Mobility in Japan and the World(日本と世界の地方のモビリティの変革)』が、1月16日に公開されていました。

その冒頭で「日本の地方のモビリティに対する需要の減少が、モビリティシステムに深刻な経済的負担をかけています。地方のバス会社の85%が損益分岐点を下回っています。中国地方の60%の鉄道の収益は、営業コストの50%を下回っています。この低収益性は人口密度が低いことによって引き起こされる構造的な問題であるため、鉄道事業者に運営効率の向上を促しても、本質的な問題解決になりません。人口の減少だけでも、2040年までに地方の交通収益性がさらに5-10%低下する可能性があります」という問題提起をしています。 

そして、この問題の解決に取り組むために「DRIVER」という地方のモビリティのためのソリューションフレームワークを提案しています。
Dynamic route: 路線バスのように決められたルートを走るのではなく、オンデマンドで出発地点に迎えにきて目的地まで送ってくれるモビリティサービス。
Resident-involved: 輸送業務に住民組織と非政府組織を関与させる。
Intermodal: サービスとしてのモビリティ(MaaS)アプリケーションを使用して、公共交通機関モード全体で支払い、予約、スケジュールの調整を統合することで、顧客体験を向上させる。
Versatile: モビリティサービスは、移動サービスそのものだけで利益を得ようとするだけでなく、人々が移動することによって、直接的間接的に利益を得る他の業界とのパートナーシップを考慮して、より大きな利益プールにアクセスする必要がある。 
Efficient: 既存のサービスを改善し、新しいソリューションを活用してより効率的にする。
Rightsized: 需要の減少に対応するために、適正な規模の交通モードを選択し、収益性と顧客満足度の向上を前提にモビリティミックスを調整する。
地域の人口の減少によってモビリティへの需要が減り、モビリティサービスの収益が減り赤字が拡大するという構造。行政からの追加支援がなければ自ずとサービスレベルが低下することになります。そして、地域のモビリティのサービスレベルの低下は、さらなる人口減少を招く一因となります。

DRIVERは、その悪循環を断つためのソリューションフレームワークです。レポートは、どの要素に優先して取り組むべきかは地域の実情によって異なるとしていますが、どの地域においても優先すべきはサービスレベルを向上させることだと思います。特に、適正な規模の交通モードを選択し、モビリティミックスを調整すること(Rightsized)が必要ではないかと。

2018年6月に国土交通省 国土交通政策研究所が発表した『多様な地域公共交通サービスの導入状況に関する調査研究』では、地方のモビリティを確保・維持するための施策のひとつである「コミュニティバスやデマンド交通の効果的な導入」に焦点を当て、何がその利用者増に貢献するかを調査研究しています。

デマンド交通とは、路線やダイヤをあらかじめ定めないなど、利用者のニーズに応じて柔軟に運行するバス又は乗合タクシーを指し、コミュニティバスは、交通空白地域・不便地域の解消を図るため、市区町村自らバス事業者として、またはバス事業者に委託して路線定期運行するバスを指しています。

デマンド交通の方がコミュニティバスより潜在的な需要があるものの、デマンド交通は運営が厳しく、バス停から自宅などの移動の起点・終点までの距離や待ち時間などの短縮といったサービスレベルの向上が難しい。結果的にコミュニティバスの運行の方が多くなっている。そして、デマンド交通の方が増加後減少の割合が多くなっており、導入後の利用者数を増加させるための改善においても、コミュニティバスよりうまくいっていないという、デマンド交通の運行継続の難しさが報告されています。

Rightsizedは、鉄道や路線バス、そしてコミュニティバスやデマンド交通などの組み合わせ(モビリティミックス)を、地域の需要に合わせて調整し最適化します。モビリティミックスにおいてラストマイルを担うモビリティはDynamic routeが理想です。電話や配車アプリでタクシーを呼び出せばDynamic routeになりますが、既存のタクシーを地方のモビリティミックスに組み込むことは難しいと思います。

日本のタクシードライバーの給与の大部分は、売上げの50%から60%の歩合制になっており変動費に分類されます。そのため、変動費を削減してタクシー1台当たりの限界利益率(限界利益/売上)を向上させることは難しく、利益を増やすためには車両数を増やさなければなりませんが、タクシー事業には運賃と車両台数の規制がかけられています。

ロボット(無人)タクシーは、その変動費を大幅に削減することができます。しかし、一般の乗用車を自律走行可能にしたタクシー用車両は非常に高価(数千万円)です。それでは、地域に必要十分な台数のロボットタクシーを投入することは難しい。それに、ラストマイルには、高速道路を走行するような車両は必要ありません。

私たち(PerceptIn)は、コンピュータビジョンを中心にした独自のセンサー統合技術による、低速の自律走行電動車(LSEV)を1/10程度の価格で提供します。この車両を使用する「マイクロ・ロボットタクシー」は、地方のモビリティミックスのDynamic routeのためにデザインしたモビリティサービスです。

世界経済フォーラムのレポートは、「今後10年間で過疎地域が世界中に広がるにつれて、地方のモビリティの重要性が増すだろう。そして、新しいソリューションの実現性も重要になる。日本および世界中で、地方のモビリティ市場は広く開かれており競合も少ない。そして、さらに重要なことは、ユーザーがそれを本当に必要としていることだ」と結論づけていますが、マイクロ・ロボットタクシーの事業化を目指している私たちの考えと完全に一致しています。

Dynamic routeのモビリティサービスは既存のタクシーとの競合になりますが、デマンド交通も競合モード・路線との調整をした方が、より利用者数が増えるという調査結果が出ています。

複雑な社会問題の解決のためには、関係するすべてのプレーヤーが集まり、アジェンダを明確にし、大きなインパクトが起こせるように互いに補い合って、問題解決のための活動を実行するコレクティブ・インパクトというアプローチが必要です。レポートも「技術と情熱を持ったより多くのプレーヤーがこの問題に取り組み、より良い成功事例を一緒に開発するために大義に加わることを切望する」と結んでいます。
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6年ほど前に「カメラのほんとうのイノベーションはこれからだ!」という記事を書きました。当時、米国系テック系の某有名ウェブメディアでの記事連載のお話があって、この記事を持ち込んだところ、当時の編集長曰く「いまさらオワコン(これもすでに死語)の話は...」その後、音信不通になった記憶があります。

6年が経過し、その間のスマホのカメラの技術の進歩はめざましいものでしたが、カメラメーカーは、カメラのイノベーションを起こすことができませんでした。
クリステンセンのイノベーションのジレンマは、安定した強固なバリューネットワークを持つ企業に生じるものであったが、デジタル時代においては、経営者はそもそも安定した強固なバリューネットワークというものを構築すべきか否かという判断を迫られている。フィルムのエコシステムは100年以上にわたって多くの企業に利益をもたらしたが、フィルムメーカーに代わって写真産業の頂点に立ったカメラメーカーの業績は10年そこそこで陰りが見え始めている。(カメラのほんとうのイノベーションはこれからだ!)
陰りが見え始めたと書いた2013年のカメラの出荷台数は約6100万台、昨年は、その約1/3の1950万台余りにまで落ち込みました。ピーク時と比べれば1/5という数字です。今年は、さらにその20%減で推移しています。(データは、カメラ映像機器工業会の「デジタルカメラ統計」をご覧ください)

確かに、何をいまさらの「カメラのイノベーション」ですが、私は、ほぼすべての人が「ムリ」と思っていることの答えを見つけることが大好きです。いまは、(自動運転の)ロボットタクシーの立ち上げに没頭していますが、それと同じぐらい「カメラのイノベーション」への挑戦は面白いと思うのです。

私の答えは、「ママカメラ、パパカメラ、タビカメラ、サンポカメラを創る」ということです。

そんなものは、すでにいくらでもあると言われると思います。しかし、それらは、デザインや機能が、例えば「ママが子供の写真を撮る」ために「適して」いるということに過ぎません。「ママが子供の写真を撮る」ためのカメラをつくったのではなく、「適した」機能やデザインを持ったカメラを、マーケティングとして「ママカメラ」というコンセプトを後付けしたものです。

「子供の写真を撮る」ことがママの目的ではありません。何か別の目的があって「子供の写真を撮る」のです。いまの「ママカメラ」で、その目的を達成できているでしょうか?カメラメーカーの人が、その疑問からカメラを考え直すことができれば「カメラのイノベーション」は可能だと思います。

スマホで写真を撮る人たちには、様々な目的があります。スマホカメラの性能がどんなに向上しても、カメラの機能だけでは、それらの目的を達成することはできません。インスタグラムやフェースブックやスナップチャットなどは、カメラを再発明してイノベーションを起こしたのです。

世界中の人々は、写真を撮ることが大好きです。これは変わることはないでしょう。それが、誰もが「ムリ」だと思っている「カメラのイノベーション」への挑戦が面白いという理由です。人々の基本的なニーズは不変で、新しく生まれた技術によって、その手段だけが変化して行きます。技術の進化が無限であれば、人々が何かをする手段も無限に変化する可能性があります。スマホカメラとインスタグラムで終わりではないのです。

カメラメーカーの方にひとつ提案があります。

社内の、カメラの事業とはなるべく離れた部門の、就学前のお子さんを育てているママやパパで、ミクシィが運営する家族アルバムアプリ『みてね』を使っている方を20名とか30名集めてください。お昼をご用意して、例えば11時から13時ぐらいの時間で、5人ずつぐらいのグループにして、子供の写真をどんなときに、どれぐらい撮っているのか。そして『みてね』をどんな風に使っているのか。なぜ『みてね』を使っているのか。そんなことを話し合ってもらってください。

カメラ事業の方は、各グループに一人か二人同席して、その会話を観察してください。会話が停滞したり大きく脱線したときのために、あらかじめ用意した質問を投げかける以外は発言を控えます。30分ぐらいでグループをシャッフルします。観察者は動かずに、メモもとらずにひたすら観察してください。

ママカメラとパパカメラの答えが必ずあります。ママカメラとパパカメラはまったく違うはずです。それは、いわゆるカメラというハードウェアだけではないことに気づくはずです。インスタグラムもフェースブックもスナップチャットも、イノベーション後のカメラなのです。

10人の観察者のうち、8人は気づかないかもしれません。あるいは間違った答えを見つけるかもしれません。そして1人か2人は、いままでつくってきたカメラがなぜ使われなくなってしまったかに、なんとなく気づくでしょう。あとは、その1人か2人が「カメラのイノベーション」に挑戦しようと思うかです。それは、さらに10人にひとり、あるいは100人にひとりかもしれません。

しかし、「カメラのイノベーション」はいつでも可能です。


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