デザイン思考で行こう!

Life will find a way, we'll find a way technology lives.

D.A.ノーマンの「誰のためのデザイン?」の改訂版が発売された。



彼のエッセイ"Technology First, Needs Last"と "Human-Centered Design Considered Harmful" とそれに続くいくつかの投稿で提唱された "Activity-Centered Design" がどのように説明されているかが気になって、ざっと読んでみた。
余談だが、最近はKindle版の書籍を購入するようになり自宅ではiPad、外出先ではiPhoneのKindleアプリで読んでいるのだが非常に便利だ。デジタル・マーケティングやイノベーション関連ばかり乱読しているのでどうしても英文の本ばかりになるが、わからない(多くの)単語をタップするだけで和訳が表示されるのでスムースに読み進むことができる。気になるフレーズはマーカーで印をつけておけば、いつでも一覧表示から確認してその部分にジャンプすることもできる。読み進んだデバイスでの最終ページは、もうひとつのデバイスで開いたときに同期をしてくれる。この新しいユーザー体験が、ついAmazonに行って次の本を探したり、O'Reilly Mediaから毎日のように届くお勧めをクリックしてしまう僕の行動を生み出している。

第6章 Design Thinking と第7章 Design in the World of Business は完全に新しく追加されたとなっている。手元にオリジナルバージョンがなく(これも誰かに貸したはずだが)かなり昔に読んだので、その前の章の内容もあまり覚えていなかったが、読んでいるうちになんとなく思い出した。"Activity-Centered Design"は"Human-Centered Design"を否定して取って代わるような考え方としてではなく、"Human-Centered Design"の方法論として説明されているという印象だ。すなわち文化などによって異なる「個人」ではなく、人々の「行動」によってデザインを決めるべきだということ。"ACTIVITY-CENTERED VERSUS HUMAN-CENTERED DESIGN"という見出しの文節もあるのだが、全体を通してHCDの考え方は変わっていないように思う。
Designers first spend time determining what basic, fundamental (root) issue needs to be addressed. They don't try to search for a solution until they have determined the real problem, and even then, instead of solving that problem, they stop to consider a wide range of potential solutions. Only then will they finally converge upon their proposal. This process is called design thinking.

まずデザイナーは、 取り組むべき基本的で本質的な問題が何であるかを特定することに時間を費やす。そのほんとうの問題を特定するまで、その解決策を探すようなことはしない。さらに問題を特定した後でも、すぐにその問題を解決しようとするのではなく、立ち止まって広い視野で可能な解決策を広い視野で考える。そしてようやく自らの提案に集中する。このプロセスを「デザイン思考」と呼ぶ。
そしてHCDをデザイン思考のための強力な2つのツールの1つと位置付けている。もう1つは"The Double-Diamond Model of Design"と呼ばれ、問題の特定プロセスとその解決策を考えるプロセスにおいて、それぞれをいったん発散させて広い視点で客観的に考えてから結論に収束させるというものだ。そしてその2つのプロセスでHCDのデザイン手法
  1. Observation
  2. Idea generation
  3. Prototyping
  4. Testing
を繰り返して正しい結論を導く。この考え方はEric Riesの  "THE LEAN STARTUP"で提唱されているBuild-Measure-Learnの繰り返しによって、仮説としてのビジネスモデルを検証する手法と同じだ。また、そもそもデザイン思考という考え方を生み出したIDEOの"The Art of Innovation"で解説されている試行錯誤型アプローチとも(当然ながら)同じである。
ノーマンはHCDを否定しているのではなく、あまりにもそれを論理的に解釈したデザインやデザインの教育に対して警鐘を鳴らし、よりHuman-Centeredな取り組みをするべきだと訴えているように思える。

全体を通してHCDを実践はデザイナーの仕事として説明されているが、「ビジネスに携わる人がデザイナーをよく理解する必要などない。彼ら自身がデザイナーになる必要があるのだから。」というロジャー・マーティンの言葉で納得することにする。

この本を読んでいくつか気がついたことがある。この後、書いてみようと思っている。

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川手恭輔(Internet Born & Bred)
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2009年にはグローバルで、パーソナルデバイスの普及は16億個、モノのインターネットは9億個だったが、2020年にはパーソナルデバイス73億個、モノのインターネットは300億個と爆発的に普及が進む。それにより、モノのインターネットによって得られる経済価値は1兆9000億ドルに及ぶと同社は予測する。その経済価値の中で最も多くの価値を享受すると見られるのが製造業で全体の15%に当たる2850億ドルの経済効果が得られる見込みだという。

これはMONOist(製造ITニュース)の「モノのインターネット」製造業への経済効果は2850億ドル―ガートナーからの引用だが、さらに次のように解説している。

モノのインターネット化によりあらゆる企業がテクノロジ企業となる可能性を持つ。製品の中にどんな技術を搭載させるのか、ということよりもクラウドの中で周辺にどういう技術を配置するのかが重要になる。今の業界の枠組みや競合関係を超えた新たなビジネスが生まれる 

「モノのインターネット」"Internet of Things" という概念はRFIDの標準化を推進したKevin Ashtonが提唱した。常時オンのRFID(無線自動識別)チップを埋め込むことで、すべてのもがインターネットにつながり遠隔操作やデータ共有が可能になるというものだ。それがクラウドや通信技術の進歩によってようやく現実のものとして考えられるようになった。しかし「製品の中にどんな技術を搭載させるのか、ということよりもクラウドの中で周辺にどういう技術を配置するのかが重要」ということを認識して、その技術だけでなくそれによって実現するビジネスモデルをデザインするという取り組みは果たして行われているのだろうか。きっとその取り組みは次に世界を変えるものになる。と、みんなが言っている。

internetofthings

「モノ」は食品から文房具や日用品、もちろん電子機器も含めたあらゆるものを指している。モノがインターネットにつながるといっても、電子機器以外は直接つながるわけではない。例えば、缶ビールなどにRFIDが埋め込まれていれば、それが冷蔵庫に入れられたときに、それをインターネットにつながれた冷蔵庫が検知して「(奥さんの)XXXさんが冷蔵庫にXXXビールを3本入れました。」とかが僕のfacebookにフィードされるなんてことになる。

things

くだらない例だったが、モノがどんなデータをクラウドに送るか、あるいはクラウドからダウンロードするか、そしてそれがユーザーにとってどのような価値になるのかはモノによって異なるし、1つのモノでもいくつかの活用方法があるだろう。モノからのデータをユーザーが理解し役に立つような情報に加工、編集して表示する。あるいはユーザーの指示を受けてモノに伝達する。それがアプリケーションだ。そのアプリケーションがなければモノをインターネットにつないだところで何の価値も生まない。「モノのインターネット」とはアプリケーションまでを含めたバリューデザインを意味している。

valuedesign

上図はあくまでも1つの実施例だが、この図で何がモノで何がパーソナルデバイスなのかをわかりやすくするために、パーソナルデバイスはiPhoneなどのスマートフォンをイメージし、モノはインタラクティブなユーザインタフェースをもたない缶ビールのようなものを想定する。
「XXXさんが冷蔵庫にXXXビールを3本入れました」のお知らせも1つのアプリケーションだが、「XXXさん、そろそろビールがなくなりますよ、今日はXXXで安売りをしてます」とかのお勧めが届いたりするなど、とりあえずうるさいとかプライバシーとかの問題は置いておいて、あなたの事業の製品やサービスに関連するモノについて「モノのインターネット」を考えてみる。技術的に実現不可能と思うことでも技術はすぐに追い付いてくる。そんなことが必要なのか?という疑問を越えて実現すれば「こんなものが欲しかったんだ」という発明につながるかもしれない。なによりもそんな取り組みは楽しい。冷蔵庫とビールだけではない(あたりまえだが)、今はだれも思いつかないけど、それが当たり前になるようなユーザー体験を考えてみよう。エンドツーエンドの価値を提供した者がゲームの勝者になる...といろんな人が言っている。

繰り返しになるが、モノ毎のアプリケーションがバリューデザインの肝になる。そしてユーザーがそのアプリケーションを利用するのはパーソナルデバイスになる。今後、パーソナルデバイスはスマートフォンという形状だけでなく多様化するだろうから、アプリケーションはそれを想定した実装で考えた方がよい。

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Amazonをブラブラしていてたまたま見つけた本、その値段(195円)にびっくりしてサンプルも読まずに1-Click™で購入してしまった。



他に読みかけのおもしろい本があったのだが、ちょうどiPodについてブログを書こうかなと思っていたのでこっちを読み始めてしまった。iPodについて書こうかと思ったのは、LinkedInでChris Fralicの記事The Butterfly that Started the Apple Tsunamiで、ちょうど10年前にiPod/iTunesがWindows対応をしたということに気づいたからだ。

On October 16th, 2003, Apple launched "the best Windows program ever" - iTunes for Windows.- Back then Apple had a whopping 3.2% and declining US computer market share. The idea of Apple writing software for the PC was heresy inside of Apple.

2003年10月16日にAppleは、”かつてない最高のWindowsのプログラム” iTunes for Windowsを発表した。その当時Appleのコンピュータ市場のシェアは3.2%にすぎず、さらに減少しつつあった。Windowsのソフトウェアを書くという考えはアップルではありえないことだった。

iPod
その時Windowsユーザーだった僕も10年ぶりのApple製品となる第3世代のiPodを購入して以来、iPhone/iPadを買い続けるようになってしまった。その最初のiPodは今でも現役で(もちろんバッテリーはへたってしまい、そのコネクタをサポートするPCもなくなり音楽を更新することができなくなってしまったが)、車のオーディオのCDチェンジャーコネクタに接続されてちょっと古い音楽を鳴らしてくれている。



そう、ジョブズは2007年のマックワールドで"Today Apple is going to reinvent the phone!(今日、Appleは電話を再発明する!)"と言ったが、世界を変える発明はiPodによってなされたと僕は考えている。

Appleは2001年1月9日にサンフランシスコで開催されたマックワールドエキスポで初めてiTunesを発表した。iTunesは2000年にジョブズがCEOに復帰した直後にAppleがその権利を買収したSound Jam MPというソフトを元に、Appleに移籍したその開発者たちが開発したそうだ。このときジョブズは、同時にデジタルハブ構想も発表している。パソコンがさまざまなデジタル機器を相互連携させるためのハブとしての役割を担うことによって、デジタル機器が人々のライフスタイルをもっと楽しく便利にするものになるというものだ。
"Say hello to iPod. 1,000 songs in your pocket."というキャッチコピーで初代iPodが発表されるのはその年の10月23日になる。もちろん、iTunesとデジタルハブ構想を同時に発表したのだから、そのときすでにiPodという新しいデジタル機器のイメージはできていたはずだ。AppleはiTunesの発表の直後に携帯音楽プレーヤーの市場調査を始め、それからiPodの開発に着手したようだ。
そして2年後の2003年に第3世代のiPodとiTunes Music Storeが発表された。それは単なるiPodという携帯音楽プレーヤーとしてだけではなく、それに音楽というデジタルコンテンツの流通メディアとしてのインターネットと、そのコンテンツをiPodに中継するハブとしてのiTunes/PCとが統合された新しいプラットホームの発明の瞬間だった。ジョブズがSound Jam MPを見たときに、どこまでを見通していたのだろうか?

この「まずiTunesがあった」という事実が非常に興味深い。iTunesというPCのソフトウェアからiPodという新しいデジタル機器が生まれ、そこで消費されるコンテンツを供給するメディアとしてiTunes Music Storeが生まれた。段階的に市場に問いかけるように試行錯誤を繰り返して徐々にイノベーションを起こしてゆく。それと同時にユーザー獲得の施策の積み上げをやってゆく過程で、その新しい価値に気付いたユーザーを味方につけ、その勢いを利用して市場拡張をはかり、最初はコンテンツ提供を渋っていたプロバイダー側もその流れに乗らざるを得ない状況がつくられて、そのシステムのプラットホームとしての要件が満たされていった。そしていったん音楽というひとつのジャンルのコンテンツ市場においてユーザーのコミットメントを得てコンバージェンスに成功すると、そこからの拡張はそれまでより格段に容易になる。TechCrunchの記事のインタビューの中でNolan Bushnellが言っている。

"I actually think iPhone was actually an exchange of iPod ecology."

ジョブズが最初に唱えたデジタルハブ構想は、モバイル通信とクラウドというインフラの発展によってデジタル機器とサービス/コンテンツが直接つながり、パソコンによる中継が不要になったことによってモデルが変わった。iPodやiPhoneが扱うコンテンツも多様化し、iTunes Music StoreはiTunes Storeに発展してiCloudという新しいしくみも現れた。いうまでもなく、Appleの収益のほとんどはiPhone/iPad/iPodというハードウェアからもたらされている。Nolan Bushnellは、「Appleは未だにiPodで止まっている」と言っているが、他のものづくり企業を含めてまだまだ世界を変える(再)発明のチャンスは多く残されている。僕は「まずiTunesがあった」から、ということが1つの糸口だと思っている。

冒頭に紹介した本に次のような記述があった。

JON RUBINSTEIN
We argued with Steve a bunch [about putting iTunes on Windows], and he said no. Finally, Phil Schiller and I said "We’re going to do it." And Steve said, "Fuck you guys, do whatever you want. You’re responsible." And he stormed out of the room. 
 
我々は、WindowsにiTunesを提供することについてスティーブと多くの議論をした。そしてついにフィルと私は「我々はやります。」と言った。スティーブは「くそったれ!好きなようにするがいいさ、責任はとれよ!」といって部屋から飛び出していってしまった。

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最近のTechCrunchの記事から引用させていただく。

Gartnerの最新の調査報告によると、企業はビッグデータに積極的に経費を投じているが、まだ、それで何をするのかに関するプランが明確でないところが多い。調査対象の企業の64%が2013年にすでにビッグデータ関連のソリューションを購入をまたは投資を予定しており、2012年の58%に比べ明らかに増加している。その64%の内訳は、30%がすでにビッグデータ技術に投資、19%が来年の投資を予定、15%が2年以内に投資を予定(計64)、となっている。しかし回答企業720社のうち、実際にビッグデータ技術を展開配備しているところは8%足らずである。
ビッグデータは2013年に340億ドルのIT支出を惹起すると予測されているが、ビッグデータによるソリューションに魅力を感じている企業は多いものの、その多くは具体的な導入戦略について検討中の段階である。

これを読んで1990年代後半からのCRMブームを思い出した。僕も「CRM―顧客はそこにいる (Best solution) 」という本からヒントを得て、1999年ごろから独自のCRMシステムの立ち上げと運用を行ったことがあるがそれは棚に上げておく。この本は誰かに貸したままで手元にないのでリンク先からの引用になるが
 
CRMとは顧客データの分析をもとに顧客を識別し、コールセンターやインターネットなどの新しいチャネルを利用して顧客との関係を深めるという広義のマーケティング手法である。

となっている。
CRMの事業的な目的は、顧客との関係を深めることによってLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)すなわち顧客が生涯にわたって自社にもたらしてくれるであろう利益を最大化することだ。

コンスーマ向けの製品を供給しその販売を流通業などの他者に依存する多くの製造業にとって、顧客との関係を深めるための
顧客との接点(タッチポイント)は、アフターサービスに関係するコールセンターなどのチャネルしかなかった。そのためCRMはCS(顧客満足)活動などと混同されがちで、またどうしても購入した製品の故障などのきっかけによる顧客からの接触を待つだけの受身のものになってしまう。
そこでIT系のコンサルやベンダーの考え出した提案は、購入製品の保証期間の延長などをインセンティブとしたユーザー登録によって顧客情報を獲得し、定期的にEメールを送付することによって企業のポータルページへのアクセスを得ようというものだった。しかしそれらの製造業のCRMの取り組みの多くはあまりうまくいかなかったように思う。店舗やオンラインのコマースサイトを持ち頻繁に顧客との接触のあるサービス業や流通業と異なり、Eメールとポータルサイトという非常に限られたタッチポイントだけでは顧客視点に立った体験シナリオを描くことが難しい。
コンテンツをカスタマイズするだけの情報もシナリオもないまま、しくみだけが1to1という虚しい一方的なダイレクトメール発送システムと製品の宣伝ページのCMSに巨額のIT投資をしただけになってしまったのではないだろうか。
さらにソーシャルメディアの広がりによって、ソーシャルCRMとかソーシャルメディアからのリードを獲得するというマーケティングオートメーションまでをCRMに含めたような提案が出てきている。これまでの購買顧客にフォーカスしたCRMシステムではとうてい対応ができるはずがないからまた作り直しになる。

引用した文は次のように続く
その際、1つの商品や製品から顧客への短期的なアプローチを考えるのではなく、1つの企業体として長期的かつ全社的に顧客中心の視点を持つことが前提となる。
右往左往しながらのCRMシステムへのIT投資やMy Xxxx(ブランド名)などのCRMコスメティックをする前に、この前提に立ち戻って
自社の製品が提供する顧客価値を見直し、「もの」の価値だけでなく、その「もの」を使うことによって顧客が体験する「こと」の価値を高めてゆくという考え方が必要なのではないだろうか。その「こと」の価値を高めてゆこうという取り組みの中で、必然的に顧客とのタッチポイントが生まれその関係性が深まってくるはずだ。プロダクトアウトからマーケットインへの発想の転換が必要だと叫んでも、成熟した企業が急激な自己変革を起こすことは非常に難しい。目先の顧客視点や顧客ニーズによるマーケットインではなく、Webサービスによって顧客のコミットメントを得ている体験価値をベースとした商品企画・開発を行うことによって、持続的イノベーション以上のイノベーションができるのではないかと考えている。

自社が提供する「もの」を使うことによって顧客が体験する「こと」の価値をいかにして高めてゆくかという取り組みの中で顧客との長期的な関係性を築き、そのフィードバックを得て製品のイノベーションを達成してゆく。

コンスーマ向けの製品を供給する製造業ならではの、このようなマーケティング手法があるのではないだろうか。

さて、ビッグデータブームである。TechCrunchからの引用にあるように「
企業はビッグデータに積極的に経費を投じているが、まだ、それで何をするのかに関するプランが明確でないところが多い」のだからまさにブームと呼んでいいだろう。記事からたどった先のGartnerのレポートを見ると、製造業(天然資源を含む)の6割がすでに投資している、あるいは1〜2年以内に投資する予定であると答えている。

gartner

顧客とのタッチポイントを持たない製造業がビッグデータを活用しようとすると、それはソーシャルネットや検索エンジンのプロバイダーが提供するビッグデータを利用することになる。その中身は人々の行動履歴や「つぶやき」などの非構造化データである。当然、その収集(利用)や分析にはITベンダーやコンサルの力が必要になってくる。漠然と「こんなことがしたい」と言いさえすれば、膨大な提案書が配布されたプレゼンテーションに続いて要件定義ワークショップが実施され予算に応じたシステム開発がスタートする。CRMブームの時もそうであったしBIブームのときもそうだったのではないだろう。

時を同じくして日本でも朝日インタラクティブの調査がZDNet Japanに掲載されていた。

無題

製造業が顧客とのタッチポイントを持っていないと書いたが、実は上に太字で書いたような製造業ならではのマーケティング手法によれば、製品そのもの、あるいは顧客の体験価値を高める取り組みが顧客とのタッチポイントとなり、顧客の行動を把握するデータを収集することが可能になるのではないかと思う。

データ(の分析結果)に基づいて企業が意思決定を行うという姿勢はおそらく間違っていないと思う。しかしどのような意思決定のためにどのようなデータが必要なのかということを最初に明確にしておかない限り、ほとんどの取り組みは失敗するか結果が出ないまま投資を続けることになる。必要とするデータはどのようなものかが明確になれば、ビッグデータから必要なデータを抽出して分析すべきか、あるいは別の手段で必要なデータを収集すべきかが見えてくるはずだ。
ビッグデータブームのおかげで、データサイエンティストなる専門職が注目され始めている。その仕事は、それぞれの企業にとってどのようなデータをどのように活用すれば企業の成長が達成されるかという戦略立案から取り組むべきだろう。

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Stop asking “But how will they make money?"とAndrew Chenが言っている。ビジネスとして収益化することは重要だが、それはすでにコモディティ化している。もしオーディエンスがいるなら、あなたはそれを収益化するための数百の選択肢を持っているのだと。要はオーディエンスを増やせばいいのだ。それもすごい数のオーディエンスを。

いま取り組んでいるプロジェクトのビジネスモデルは直接的な収益を狙うフリーミアムのモデルでも、いわゆる広告モデルでもない。他に似たような例が見つからずどう説明してよいかと困っていたのだが「たまたま」いいものを見つけた。Twist ImageのプレジデントMitch Joelが新刊のなかで提唱している"Utilitarianism Marketing"という考え方だ。

Ctrl Alt Delete: Reboot Your Business. Reboot Your Life. Your Future Depends on It.
Ctrl Alt Delete: Reboot Your Business. Reboot Your Life. Your Future Depends on It. [ペーパーバック]

"Utilitarianism Marketing"を直訳すると「功利主義マーケティング」となる。"Utilitarianism(功利主義)"とは自分の利益になることは社会全体にとっても利益になり、逆もまた然りであるという考え方とのことだ。
(この部分訂正しました)

 Utilitarianism marketing is going to be the next great business disrupter.
 What is utilitarianism marketing? It's not about advertising, it's not about massaging, and it's not about immediate conversations. It's about providing a true value and utility: something consumers not only would want to use - constantly and but would derive so much value from it that it would be front-and-center attention in their lives. Do you think your brand has the ability to create that kind of interest and attention in this media-saturated and ads-everywhere world in which we live?

功利主義マーケティングは次にビジネスを大きく変えてしまうものになるだろう。
功利主義マーケティングとはなんだろう?それは広告に関することではなく、メッセージングに関することでも、顧客との直接的な対話に関することでもない。それは真の価値と実利の提供に関することだ。それは消費者がいつも使いたくなるだけでなく、それを使うことによって多くの価値を得ることができる何かであり、それは彼らの生活において大きな注目の的となるだろう。我々が暮らしているこのメディアや広告が溢れた世界において、あなたのブランドはそのような興味をかきたて注目を集めることができるだろうか?

アドボカシー(advocacy: 顧客支援)マーケティングという概念に含まれるようにも考えられるが、より具体的なマーケティング活動を指している。企業はそのプロダクトによって機能的価値を提供するが、そのプロダクトに関連する別の機能的価値をマーケティングとして提供することによって消費者の信頼と評判を獲得しようというものだ。わかり易い例が挙げられている。SitOrSquatというiPhoneアプリは、いま自分が居る周辺の利用できる清潔なトイレを教えてくれる。このサービスが評判となって多くのユーザーを獲得すると、P&Gが自社のトイレットペーパーのブランドCharminのマーケティングに利用すべくグローバルなスポンサーとなった。今ではSitOrSquatのアプリアイコンもCharminのブランドのデザインになっている。そう我々はSitOrSquatをつくっている。

実はこの本に数日前にたまたま遭遇して、そのタイトルとタグライン"Ctrl Alt Delete: Reboot Your Business. Reboot Your Life. Your Future Depends on It."に惹かれて内容をまったく調べずにAmazonで注文をしてしまった(なぜか日本ではKindle版が入手できない)。以前から著者のMitch Joelの"Six Pixels of Separation"という、マーケティングを話題にしてその分野のいろいろな人にインタビューをするPodcastを聴いていた(正確には聞き流していた)ので、彼のマーケティングに関する考え方が書かれているだろうぐらいに考えていた。しかし(まだ前半のReboot Your Businessを読んだだけだが)、これがすごく面白い。これまでに読んだビジネス書のなかで一番面白いし文章にリズムがあってすごく読みやすい。もしかするとこれまでに読んだ小説や物語も含めて一番面白い...少なくとも今の僕には。そして( )でこんなにたくさんの注釈が入った本は初めてだが、それが僕の感覚に合っている。

いきなり大きな話になってしまうが、日本の一般消費者向けの製品(ハードウェア)のビジネスは危機に直面している。アベノミクスによる一時的な円安で輸出産業の利益が改善したとしても、製品自体の魅力や競争力が向上しないかぎり先はそう明るくはない。製品(ハードウェア)やそれが提供するエクスペリエンスの価値をWebサービスやアプリケーションなどのソフトウェアによって拡大するという考え方と、この"Utilitarianism Marketing"(功利主義マーケティング)という考え方は、そのアプローチがプロダクト側からかマーケット側からかの違いだけだろうと思う。それらは顧客価値という接点で融合しビジネスモデルのイノベーションを可能にし、さらに製品のイノベーションを誘引することができるのではないか。あるいはそのような取り組みを行おうとする意識が、イノベーティブな製品を生み出すことを可能にするのではないかと考えている。日本にはその種となる多くの製品とそのビジネスが存在する。そのいろいろな製品分野で"Utilitarianism Marketing"(功利主義マーケティング)を考えることができるはずだ。

さて、後半のReboot Your Lifeにはどんなことが書いてあるのだろう。

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