Stop asking “But how will they make money?"とAndrew Chenが言っている。ビジネスとして収益化することは重要だが、それはすでにコモディティ化している。もしオーディエンスがいるなら、あなたはそれを収益化するための数百の選択肢を持っているのだと。要はオーディエンスを増やせばいいのだ。それもすごい数のオーディエンスを。

いま取り組んでいるプロジェクトのビジネスモデルは直接的な収益を狙うフリーミアムのモデルでも、いわゆる広告モデルでもない。他に似たような例が見つからずどう説明してよいかと困っていたのだが「たまたま」いいものを見つけた。Twist ImageのプレジデントMitch Joelが新刊のなかで提唱している"Utilitarianism Marketing"という考え方だ。

Ctrl Alt Delete: Reboot Your Business. Reboot Your Life. Your Future Depends on It.
Ctrl Alt Delete: Reboot Your Business. Reboot Your Life. Your Future Depends on It. [ペーパーバック]

"Utilitarianism Marketing"を直訳すると「功利主義マーケティング」となる。"Utilitarianism(功利主義)"とは自分の利益になることは社会全体にとっても利益になり、逆もまた然りであるという考え方とのことだ。
(この部分訂正しました)

 Utilitarianism marketing is going to be the next great business disrupter.
 What is utilitarianism marketing? It's not about advertising, it's not about massaging, and it's not about immediate conversations. It's about providing a true value and utility: something consumers not only would want to use - constantly and but would derive so much value from it that it would be front-and-center attention in their lives. Do you think your brand has the ability to create that kind of interest and attention in this media-saturated and ads-everywhere world in which we live?

功利主義マーケティングは次にビジネスを大きく変えてしまうものになるだろう。
功利主義マーケティングとはなんだろう?それは広告に関することではなく、メッセージングに関することでも、顧客との直接的な対話に関することでもない。それは真の価値と実利の提供に関することだ。それは消費者がいつも使いたくなるだけでなく、それを使うことによって多くの価値を得ることができる何かであり、それは彼らの生活において大きな注目の的となるだろう。我々が暮らしているこのメディアや広告が溢れた世界において、あなたのブランドはそのような興味をかきたて注目を集めることができるだろうか?

アドボカシー(advocacy: 顧客支援)マーケティングという概念に含まれるようにも考えられるが、より具体的なマーケティング活動を指している。企業はそのプロダクトによって機能的価値を提供するが、そのプロダクトに関連する別の機能的価値をマーケティングとして提供することによって消費者の信頼と評判を獲得しようというものだ。わかり易い例が挙げられている。SitOrSquatというiPhoneアプリは、いま自分が居る周辺の利用できる清潔なトイレを教えてくれる。このサービスが評判となって多くのユーザーを獲得すると、P&Gが自社のトイレットペーパーのブランドCharminのマーケティングに利用すべくグローバルなスポンサーとなった。今ではSitOrSquatのアプリアイコンもCharminのブランドのデザインになっている。そう我々はSitOrSquatをつくっている。

実はこの本に数日前にたまたま遭遇して、そのタイトルとタグライン"Ctrl Alt Delete: Reboot Your Business. Reboot Your Life. Your Future Depends on It."に惹かれて内容をまったく調べずにAmazonで注文をしてしまった(なぜか日本ではKindle版が入手できない)。以前から著者のMitch Joelの"Six Pixels of Separation"という、マーケティングを話題にしてその分野のいろいろな人にインタビューをするPodcastを聴いていた(正確には聞き流していた)ので、彼のマーケティングに関する考え方が書かれているだろうぐらいに考えていた。しかし(まだ前半のReboot Your Businessを読んだだけだが)、これがすごく面白い。これまでに読んだビジネス書のなかで一番面白いし文章にリズムがあってすごく読みやすい。もしかするとこれまでに読んだ小説や物語も含めて一番面白い...少なくとも今の僕には。そして( )でこんなにたくさんの注釈が入った本は初めてだが、それが僕の感覚に合っている。

いきなり大きな話になってしまうが、日本の一般消費者向けの製品(ハードウェア)のビジネスは危機に直面している。アベノミクスによる一時的な円安で輸出産業の利益が改善したとしても、製品自体の魅力や競争力が向上しないかぎり先はそう明るくはない。製品(ハードウェア)やそれが提供するエクスペリエンスの価値をWebサービスやアプリケーションなどのソフトウェアによって拡大するという考え方と、この"Utilitarianism Marketing"(功利主義マーケティング)という考え方は、そのアプローチがプロダクト側からかマーケット側からかの違いだけだろうと思う。それらは顧客価値という接点で融合しビジネスモデルのイノベーションを可能にし、さらに製品のイノベーションを誘引することができるのではないか。あるいはそのような取り組みを行おうとする意識が、イノベーティブな製品を生み出すことを可能にするのではないかと考えている。日本にはその種となる多くの製品とそのビジネスが存在する。そのいろいろな製品分野で"Utilitarianism Marketing"(功利主義マーケティング)を考えることができるはずだ。

さて、後半のReboot Your Lifeにはどんなことが書いてあるのだろう。

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