デザイン思考で行こう!

Life will find a way, we'll find a way Technology lives.

2014年02月

モノのデジタルリマスタリングの3つのステップを開始する前に考えなければならないことがある。
  1. インターネットによって可能になる「新しいユーザー体験」を描く
  2. バリュープロポジションを定義する
  3. それを実現する製品とWebサービスをデザインする
それは、あなたのプロダクト(モノ)に関連する情報やコンテンツを洗い出すことだ。そのモノを使って、ユーザーが何らかの目的を達成する過程をもういちどよく観察してみる。その情報やコンテンツをインターネットで扱うことによって「新しいユーザー体験」を生み出すことができるかもしれない。
例えば、ウォークマンやiPodなどの携帯ミュージックプレイヤーに関連する情報やコンテンツは何だろう。もちろんコンテンツは音楽だ。そしてユーザーが音楽を聴こうとする行動や動機や感情が情報になる。あるいは実際に聴くときだけでなく、何らかのきっかけで音楽を探したり友達との音楽について会話するといったところまで範囲を広げて、ユーザーの行動や感情の観察をしてみてもいいかもしれない。

ランニングシューズの場合はどうだろう。Nike+iPodでは、ランニングの記録という情報がインターネットで管理され共有されることによって、ランニングシューズに関連する新しいユーザー体験が生み出された。しかし、ランニングにはもっと可能性がある。
例えば、ランニングに取り組んでいる数人の知人との会話から思いついたこと。多くのランナーが、自分のランニングの技術や能力を向上させたいと思っている。あるいは、なんらかの故障を抱えながらも走り続けている人も多いようだ。友人やネット上の情報を参考にしたり、スポーツ店の販売員に相談しながらフォームの改良をしたりランニングシューズを選んだりしたりしている。フィットネスジムに備え付けられているモニターでトレッドミル上でのランニングフォームをチェックして改善に取り組んでいる人もいる。非常に多くのランナーが並々ならぬモチベーションでランニングに取り組んでいるのだ。そこには、顕在化すべき潜在的なニーズがいくらでもありそうだ
ウェアラブルナントカ(?)の流行で、ランニングシューズの中に仕込むセンサーは過去のものになりつつある。しかし、ランニングシューズから得られる可能性のある情報を見直してみる価値はあるのではないだろうか。その情報から個々のランナーの走り方の癖やレベルを把握することができれば、ランニングシューズのメーカーはパーソナルトレーナーとしてランナーに寄り添うことができる。その事業的な意義の大きさは言うまでもないだろう。ランニングフォームの改善の提案やその改善の状況に応じたアドバイス、目標とするマラソン大会へ向けたトレーニングメニューや、その消化状況に合わせたアドバイスなどのコンテンツを用意する。もちろんレベルやシューズの消耗具合のデータに基づいた新製品の紹介もユーザーにとって価値のあるものになる。

ソニーが「テニスのショットを即時分析し、スマートフォン上でわかりやすく表示。データを見て・楽しみ・上達にもつなげられる。」というラケット装着型Smart Tennis Sensorというものを発表した。「新たな体験と環境を、すぐに手にすることができます。」と書いてあるが、これはいったいなんだろう。ランニングには「距離と時間」という非常に客観的な指標がある。しかし、このテニスセンサーなるものが教えてくれるデータ(情報)はテニスプレイヤーにとってどんな価値があるのだろう。
  • ボール回転 +2
  • スイング速度 77km/h
  • ボール速度 56km/h
この数字はどう評価したらいいのだろう(大量のクエスチョンマークが発生する)。もちろん開発チームにはテニス好きがいるだろうし、ヨネックスというラケットの専門メーカーも開発に参画しているようだが。なにしろラケットをスイングするスピードを上げ、ボールに回転をかけてボールの速度をあげればいい(ゲームに勝てる、あるいは相手コートの深くに突き刺さる)などと考えるプレイヤーは少ないと思う。この数字に拘るような人は、テニス仲間の中でちょっと寂しいポジションにいるだろう。これらのデータはテニスというゲームのスポーツにとって非常に偏った部分的なものだ。テニススクールのコーチがツールとして使用し、そのデータをコーチが解釈して指導するには有効かもしれないが、どうやらこの製品の狙いはそうではないらしい。
ショット分析のデータなどを、Facebookを通じて手軽に友人と共有することが可能です。プレイ内容を友人と共有しコメントなどをもらうことで、テニスを続けるモチベーションに繋がります。
テニス仲間の誰か新しいモノが好きな人が持ってきたとき、数回は盛り上がるだろう。しかし悲しいことだが、これは数回使ったら使わなくなる。その日のゲームに全敗して、帰宅してからそのデータをFacebookにアップする人などいない。全敗の原因をボールの回転数の少なさだと思う人もいない。

これはNike+iPodにインスパイアされた(?)のかもしれないが、その表面的な部分しか取り入れていない。あたりまえのことだがラケットはテニスをする道具である。人々がテニスをどのように楽しんでいるかという観察と分析と理解が足りていない。「ラケットにセンサーをつけたら」というところから強引につくったモノのように思える。インターネット冷蔵庫と同じ発想だ。
もしソニーがスポーツ分野に本気で取り組もうというのであれば、この失敗するであろうチャレンジは無駄ではない。なにしろSonyというブランドは、AppleやNikeに匹敵する数少ない日本のコンスーマーブランドの一つだ。この失敗(発売前からこれだけ断定して、もしヒットしたら浅はかだったと反省しよう)に懲りることなく、新しいドメインへのチャレンジを続けるならば道は開けるかもしれない。しかし、次はぜひデザイン思考で考えてほしい。

もうひとつ失敗する理由はマーケティング戦略だ。アマチュアのテニスプレイヤーにとって、ラケットというモノは非常に重要な道具だ。いくらセンサーを宣伝したとしても、そのセンサーが利用できることを理由にラケットを選ぶ人は少ないだろう。まずラケット自体のマーチャンダイジングがあって、その1つの機能としてこのようなセンサーが存在すると考えるべきだろう。Nikeのように、ラケットメーカーであるヨネックスが主体になるべきだ。どのみち、ヨネックスで成功しなければ他のメーカーが対応することはないだろう。Sonyとして出すのであれば、ガットの振動止めとして組み込んだ3000円ぐらいの商品として仕様を割り切ってまとめ直したら、市場に問うための(フィードバックをもらう)ものとして面白いかもしれない。

ソニーはPCとTVから事実上の撤退を決めたようだ。その発表からは、Sonyというコンスーマブランドをどのような製品で再構築してゆくかというビジョンが見えなかった。Sonyブランドとスポーツは相性がいいかもしれない。スポーツグッズメーカーを買収するなり合弁会社を作るなりして、ソニーがスポーツ(グッズ)にITを取り込んで、新しい価値を提供してゆくなどと聞いたら皆ワクワクするに違いない。

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川手恭輔(Internet Born & Bred)
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MG Sieglerという人がTechCrunchで「愛する任天堂への私の贈り物」という記事を書いている。おもしろい。もちろん外野からの勝手な提案であり、そのとおりに実行したとしてどの程度うまくいくかはまったくわからない。しかし、おもしろい。やってみる価値はあるんじゃないかと思う。任天堂に限らず、日本のコンスーマー向けの電子機器というモノをつくっている企業はイノベーションに取り組まなければならない。

1月14日に財務省が発表した国際収支(11月速報)によると、経常収支は5928億円の赤字と2カ月連続の赤字で貿易収支は1兆2543億円の赤字と17カ月連続の赤字だという。それに関連して経済再生相が「貿易立国の原点が若干揺らいでおり、これからも注意が必要だ」とコメントしたと報道されている。貿易収支が17カ月連続の赤字で「若干揺らいでいる」とは...政治・経済について素人の僕が触れたくはないのだが、それにしても実態から目を背けているとしか思えない。
輸出の伸び悩みを円高のせいだとしてきたモノづくり企業の業績は、天地がひっくりかえるような円安になっても、その差益だけは得たもののモノの数量は増えないという悲しい結果に終わってしまいそうだ。目先の利益を得るために、円安を現地価格に反映した価格競争を仕掛けられないのだから当たり前だ。もちろん現地価格を下げたからといってどれだけ販売数量が増えるかも怪しい。貿易立国を支えてきた日本のモノづくりの力が衰えてきている。さらにテレビなどの市場自体が買い替えサイクルの長期化などで縮小してきている。

ZDNet日本版の「4K、ウェアラブル、新興国、B2B--パナソニック津賀社長の勝算」という記事で津賀社長がインタビューでこう話している。 
年末に量産試作の4Kタブレット「Tough Pad 4K」を自宅に持ち帰り、日経電子版を読んでみた。紙のリアルのイメージを持ったまま、さらに拡大縮小ができ、これよって、紙の世界が変わると感じた。このように、4Kディスプレイならではの精細度、臨場感が提案できる分野がある。
そしてBLOGOSのニュースの「ソニー、ジャンク級に格下げ」という記事には平井社長の言葉が載っている。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、ソニーの平井一夫社長兼CEOは、高性能なカメラレンズとスマートフォンのXperiaシリーズが、ソニーグループに革新をもたらすと力説している。これらと『プレイステーション4』の好調な売上がソニーを蘇らせると、平井CEOは期待を込める。
これらの記事を読んでワクワクした人はいただろうか。コンテンツ戦略の見えない4Kのテレビや、中身は皆同じのAndroidスマートフォンで、モノづくりに革新を起こせると信じているのだろうか。人々に革新的な経験を提供することができるのだろうか。だいたいTough Padってネーミングは...まあ、こんなことは皆がつぶやいている。

USA西海岸を中心に若い技術者たちがスタートアップブームに取りつかれている。そして日本でも。ちょっとバブルだと思う。それは別に悪いことでもないし、この混沌から新しい世界が生み出されるようにも思える。このブログの最初のほうで紹介したように、僕もスタートアップのまねごとみたいなことをしてきたが、それはその考え方や取り組み方法を日本のモノづくり企業のイノベーションに生かすことができるのではないかと思ったからだ。そしてもうひとつ、デザイナーからの流れ、すなわちデザイン思考やコンテクチュアル・デザインといった考え方や方法論。これらを日本のモノづくり企業が取り入れてイノベーションに取り組むことができれば、いくらでもワクワクするのモノを創りだすことができると思えてきた。

クレイトン・クリステンセンがイノベーションのジレンマを初めて提唱してから17年が経過した。そろそろそのジレンマを克服する経営手法が標準化されて、それが企業の基本戦略に組み込まれるようになってもいい頃だ。
一度(か二度)成功した企業のイノベーションにおいて、他者に対するアドバンテージと考えていいものは体力(お金)だけだ。保有技術や生産システムそして販売チャネルは、イノベーションにとっては焦げ付き資産になるかもしれない。しかし、市場にイノベーションを起こすようなモノが市場に受け入れられるには三年はかかる。これはスタートアップにはとても耐えられない。他者に投資を請うことなく、ふんだんにイノベーションに投資することができる。株主を説得できるか、
そしてその意思の上にも三年だ。

先日の一般教書演説でオバマ大統領が言っていた(9:46 )。「我々が成功するかしないかは生まれではなく、働かなければならないという気持ちの強さと夢の大きさにかかっている。」

 

They believe, and I believe, that here in America, our success should depend not on accident of birth but the strength of our work ethic and the scope of our dreams. 
 
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