デザイン思考で行こう!

Life will find a way, we'll find a way Technology lives.

2014年12月

一年ほど前に「イノベーションのマトリックス」という図を描き、今年は日本の製造業のイノベーションについて考えてきた。
このブログでは「日本の製造業」という言葉を「生産・製造」ではなく、一般消費者向けの最終製品を開発する企業を指すものとして使っている。そして「モノづくり」とは、それまでになかった新たらしい価値を提供するハードウェアを創り出すことを意味している。

まず「iPodの創り方」で、それまでになかった新しい価値を生み出すプロセスを考えてみた。

温故知新:経験経済とモノのインターネット」では、日本の製造業のイノベーションには「経験価値(Experimental Value)」を考えることが必要であり、その価値を「モノのインターネット」によって実現できるのではないかと述べた。

そして、そのための「モノのデジタルリマスタリング」という方法論を提案した。
  1. インターネットによって可能になる「新しいユーザー体験」を描く
  2. バリュープロポジションを定義する
  3. それを実現する製品とWebサービスをデザインする  
ちょうどその頃、実際のコンサル案件のプロジェクトで、「リーン・イノベーション」で説明した最初のステップ(Lean 1st Step)の取り組みを始めた。 

lean innovation

そのプロジェクトは「GoProに見る 素晴らしい製品が生まれるもう一つのプロセス」で述べたような「自分がほんとうに欲しいものを作る"Scratch your own itch!"」というもので、その取り組みの中で次のようなことを考えた。

功利主義マーケティングのすすめ
あなたの顧客が諦めていること
バリュー・ドミナント・ロジックという考え方

プロジェクトの最初のステップの成果物であるiOSのモバイルアプリのDogfooding(ドッグフィーディング;自分で試すこと)をしながら、そろそろ充電が必要だと感じて「人々は新しいハードウェアを待ち望んでいる」という記事で、シリコンバレーのハードウェア・スタートアップの取材を月刊誌Wedgeに提案した。     

そのルポルタージュはWedge 2015年1月号に、「モノづくりの新潮流 始まったハードウェア・ルネッサンス」という11ページの特集記事として掲載していただいた。
このブログでは、その記事の予告編として「IoTはすでにハイプではない」を、そして記事の補足として「ハードウェアの逆襲」を書いた。

取材と記事の執筆をとおして「日本の製造業のイノベーションには『経験価値(Experimental Value)』を考えることが必要であり、その価値を『モノのインターネット』によって実現できるのではないか」ということを再確認することができた。

Wedge 2014年8月号で「SonyはなぜGoProを作れなかったか?」という記事を掲載していただいたり、このブログでもソニーについていくつかの批判的な記事を書いたのは、日本の革新的なモノづくりの象徴であるソニーには大きな期待を抱き、その復活を信じているからだとご理解ご容赦をいただきたい。
僕がTim Cookだったら...」や「カメラを再発明しよう」で、日本の製造業に僕なりのエールを送ったつもりだ。

 来年は、現在取り組んでいるプロジェクトの次のステップ(Lean 2nd Step, Lean 3rd Step)に着手し、コネクテッド・エクスペリエンスのデザインを完成させたいと考えている。
IoTの時代においては、すべてがサービス化すると考える必要があるという。テクノロジーの会社はどうしてもテクノロジーばかり考えてしまう。ハードウェアがインターネットにつながり、クラウドやスマートフォンのアプリケーションと連携することによって、どのようなサービスを生み出すことができるかという視点で考えるべきだ。そして、個別のインタフェースデザインだけでなく、全体を通してユーザーが感じるコネクテッド・エクスペリエンスをデザインすることが重要だ。(Wedge記事より)
一年間の主な記事へのリンク集みたいになったが、次の文(引用)でこのブログの今年の更新を締めくくりたい。
いま日本の製造業に必要なことは、一丸となって取り組むことができる明確な目標を自分たちでつくることだ。それを経営陣がコミットし、全社員が共有することができれば、一気呵成に技術的な課題を解決することは日本の製造業がもっとも得意とするところだ。(Wedge記事より)
それでは皆さま、よい年をお迎えください。
川手恭輔(Internet Born & Bred)
 
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Wedge 1月号(12月20日発売)の特集「シリコンバレーがかえる ものづくりの常識」で、「モノづくりの新潮流 始まったハードウェア・ルネッサンス」という記事の執筆を担当させていただいた。編集者の方との一週間ほどの現地取材で、ハードウェアにチャレンジするスタートアップ(日本でいうベンチャー企業)やその周辺の環境を構成する企業の人たちに行ったインタビューに基づいて書いたものだ。
Wedge (ウェッジ) 2015年 1月号 [雑誌]
Wedge編集部
株式会社ウェッジ
2014-12-20

これまでウェブサービスが中心であったスタートアップの対象が、ハードウェアの分野にも広がり始めた。その一つの理由は、 3Dプリンターなどによる新しい試作プロセスや、中国の深センなどのグローバルな製造インフラが、起業まもないスタートアップでも利用できるようになったことだ。
そしてもう一つの理由として、通信技術やセンサー技術の進化によってモノのインターネット(IoT)が実現可能になったことがあげられるだろう。あらゆるモノ(ハードウェア)はインターネットにつながって、モノに関係する情報やコンテンツをクラウドと交換する。そして人々が常に携帯しているスクリーンを備えたスマートフォンで、モノや情報をコントロールすることができるようになる。 それによって、これまでになかった新しい価値を顧客に提供し、既存のハードウェアを置き換えることができるのではないかというチャンスが見えてきたのだ。

取材先のベンチャーキャピタリストがハードウェア・ルネッサンスと表現した、このようなシリコンバレーの潮流に対し、記事中で次のような提言を行った。
一般消費者向けの製品をつくる日本の製造業がまず取り組むべきことは、自社の製品がインターネットにつながり、製品に関連する情報やコンテンツを、クラウドやスマーフォンのアプリケーションで扱うことができたら、顧客にどんな新しい価値を提供できるだろうかと考えることだ。
このブログの過去の記事で、アンゾフの成長マトリックにおける多角化について、製品と市場という軸を、それぞれの上位概念である技術とドメインという軸で表したイノベーションのマトリックスという考え方を紹介した。
innovation_matrix
,魯▲鵐哨佞水平型の多角化と呼んでいるものに近い。すでに獲得している経営資源やバリューネットワークの多くを活用してプロダクトのイノベーションを行う。写真というドメインにおいてカメラメーカーが新しいデジタル技術を導入し、フィルムカメラからデジタルカメラへのプロダクトイノベーションに成功した事例がある。
△麓社の既存の製品や保有技術に関連した新しい製品によって、別のドメインに参入するというアンゾフの集中型多角化だ。Appleが自社のコンピューター、OS、アプリケーションソフトウェアという製品・技術に関連したiPodという製品によって音楽という新しいドメインに参入したケースがあてはまる。(過去記事より)
Wedgeの記事中の「一般消費者向けの製品をつくる日本の製造業がまず取り組むべきこと」という提案は、このマトリックスの,冒蠹する。「カメラメーカーが新しいデジタル技術を導入し、フィルムカメラからデジタルカメラへのプロダクトイノベーションに成功した」ように、つぎは「モノのインターネットによってプロダクトのイノベーション」を行う必要がある。スマートフォンのカメラは、「モノのインターネット、すなわちカメラがインターネットにつながることによってデジタルカメラのイノベーションを起こした」と言うことができるだろう。「 カメラを再発明しよう」でも書いたように、既存のデジタルカメラはスマートフォン・カメラに置き換えられつつある。

Appleは保有技術の応用で「音楽」という新しいドメインに参入し△領磴鮗┐靴燭、すでに「音楽」というドメインにいたソニーが、コンピューターやインターネットとの連携によってウォークマンを進化させてiPod(のようなもの)を創ったとすれば,領磴箸覆辰拭

コンテンツや情報の媒体(メディア)がアナログからデジタルに変化するとき、デジタルシフトに遅れをとった企業が衰退し、新たなプレイヤーがその市場に参入してくる状況をデジタルコンバージェンス(産業融合)という。我々はカメラやiPodの例でそれを目の当たりにしてきた。そしていったんデジタルコンバージェンスの起きた市場は、さらなる変化を起こしやすくなることも見た。 フィルムカメラの時代は100年以上続いたが、デジタルカメラの成長は10年で止まった。ウォークマンを置き換えたiPodも、あっというまにiPhoneのアプリケーションに吸収されてしまった。カメラもiPodもゲームも、iPhoneのようなスマートフォンがあれば不要になってしまったように思える。それはネットに繋がらないハードウェアの運命だ。

しかし、イノベーションはそんなときに誰かが起こす。「カメラもiPodもゲームも、iPhoneのようなスマートフォンがあれば不要だ」「それはネットに繋がらないハードウェアの運命だ」と誰もが考えているとき、誰かが「あなたの顧客の諦めていること」に気づいて、それまでになかったまったく新しい価値を提供する。きっとそこにはモノのインターネットによって再定義された新しいハードウェアがある。前回も書いたようにハードウェアとは電気で動くモノに限らない。 

D.A.ノーマンは"Technology First, Needs Last "の中で次のように言っている。
The technology will come first, the products second, and then the needs will slowly appear, as new applications become luxuries, then "needs," and finally, essential.

まず技術が最初に来て、次に製品、そして新しいアプリケーションが快適になるに連れて「ニーズ」がゆっくりと顕在化し、最後にそれが必要不可欠なものになる。
一般消費者向けの画期的な製品を生み出してきた日本の製造業は、この流れを実際に体験してきたはずだ。そのワクワク感こそが、モノづくりに関わる人々のモチベーションだと思う。それは、取材でインタビューしたハードウェア・スタートアップの創業者たちが求めているものでもある。
いま日本の製造業に必要なことは、一丸となって取り組むことができる明確な目標を自分たちでつくることだ。それを経営陣がコミットし、全社員が共有することができれば、一気呵成に技術的な課題を解決することは日本の製造業がもっとも得意とするところだ。(Wedge記事より)

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ハイプ・サイクル

新しいアイデアやテクノロジーが生まれた時、メディアの過剰な煽りなどによって市場の期待が急激に高まることがある。それをハイプという。しかし、その新しいアイデアやテクノロジーの未成熟さから、なかなか実際の製品やサービスとして実現されないと、その期待が一気に幻滅に変わる。そして、そのなかから成熟したものが生き残り、実際の製品やサービスとして市場に提供されていくという流れを、ガートナーはハイプ・サイクルと呼んでいる。


ウィキペディアによると「ガートナーの唱えるハイプ・サイクルの目的は、現実から誇張(ハイプ)を切り離すことにより、CIOやCEOが特定技術の採用可否を判断できるようにすることである。」とされている。

 IoT(モノのインターネット)

現在、テクノロジーの世界ではIoT(モノのインターネット)、ウェアラブル、そしてビッグ・データが次のイノベーションを生み出すトレンドとして注目を集めているが、8月にガートナーが発表した「先進テクノロジのハイプ・サイクル」をみると、この3つはまさにハイプ(誇張)の頂点にある。とすれば、これらの技術はCIOやCEOが採用を慎重に考えるべき段階、あるいはまだ採用しない方がよいという段階だ。

この3つはまとめて論じられることが多い。
  1. ウェアラブルから情報を自動的に収集する
  2. そのビッグデータを分析し業務的に使用する
  3. 消費者の利便性を向上する新ビジネスを開発する
という考え方のステップが、特にマーケティング業界の「過度な期待」をあおっている。さらにITベンダーも同様のシナリオでクライアント企業にシステムの導入を迫る。
このような面をみると、確かにCIOやCEOは眉に唾をつけて考える必要があるだろう。IoTによって人々にどんな価値が提供できるかという視点が欠けている。ウェアラブルやIoTによってビックデータが収集できれば、何か(わからないけど)きっと素晴らしいことができるという。そこには、その情報で顧客にあった何かを提案できれば、きっと顧客も嬉しいに違いないというマーケティング業界の思い込み(思い違い)がある。

「モノのインターネット」"Internet of Things" という概念自体はRFIDの標準化を推進したKevin Ashtonが 1999年に提唱した。常時オンのRFID(無線自動識別)チップを埋め込むことで、すべてのもがインターネットにつながり遠隔操作やデータ共有が可能になるというものだ。それがクラウドや通信技術やセンサーの進歩によってユースケースが拡大した。
衝撃的だったのは、2006年にNike(とApple)が「Nike+iPod」を発売したことだった。ゴムと皮と布でできているランニングシューズが(iPod nanoとパソコンのiTunesを介してではあるが)インターネットにつながったのだ。まさにモノのインターネット(Internet of Things)だった。
これは過去記事「温故知新:経験経済とモノのインターネット」で書いたものだ。IoTは、すでにハイプではない。IoTによってモノに新しい価値を与えることができる。

市場のルールが変わった

リーマンショック以降、不振が続いていた電気産業を中心とした一般消費者向けの製品をつくる日本の製造業は、大幅な円安による業績の回復が伝えられている。しかし、それはリストラによる人件費などの固定費の削減効果と、円安による輸出製品の利益率の向上によるものであり、売上高や製品数量が伸びたわけではないようだ。単純に言ってしまえば、海外での販売価格を下げなければ利益率は向上する。
リーマンショックや円高による不況に隠れて、実は日本の製造業の競争力が落ちていたのだ。円安で海外での製品価格を引き下げて競争しようとしても、すでに製品やその製品市場自体が力を失っていては意味がない。エネルギー輸入量の増加や、生産の海外シフトなどがその原因とされている貿易収支の悪化も、根は同じなのではないだろうか。

図は経済産業省の 「2014年版ものづくり白書」の「携帯電話の貿易収支の推移」だ。

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それまで黒字だった収支が、 2008年にiPhone 3Gが発売されて赤字になって以降は急激に悪化している。こちらも国内メーカーのスマートフォンの多くが海外生産されるようになったという理由もあるが、それにしてもiPhoneが日本経済に与えた影響がいかに大きいかがわかる。これは貿易収支の赤字が拡大している原因の一つでもあるが、それ以上に大きなダメージを日本の製造業に与えた。スマートフォンが一般消費者向けの製品市場のルールを変えたことに気づかなければならない。

パーソナルコンピュータの時代にモノのデジタル化がすすんだ。市場のルールが変わり、産業融合が起こり、デジタル化に遅れをとった多くの製造業が窮地に陥った。
そしてiPhoneの登場によって、スマートフォンがパーソナルコンピュータに取って代わった。また市場ルールが変わった。モノのインターネットの時代だ。モノはインターネットにつながり、モノに関係する情報やコンテンツをクラウドと通信し、常に携帯しているスクリーンを備えたスマートフォンでモノや情報をコントロールする。 
IoTの時代においては、すべてがサービス化すると考える必要があるという。テクノロジーの会社はどうしてもテクノロジーばかり考えてしまう。ハードウェアがインターネットにつながり、クラウドやスマートフォンのアプリケーションと連携することによって、どのようなサービスを生み出すことができるかという視点で考えるべきだ。そして、個別のインタフェースデザインだけでなく、全体を通してユーザーが感じるコネクテッド・エクスペリエンスをデザインすることが重要だ。(前回記事)
ハードウェア・ルネッサンス

月刊誌Wedgeの1月号で特集を組むために、シリコンバレーとサンフランシスコのハードウェア・スタートアップと、それを取り巻く環境について取材を行った。これまでウェブ・サービスなどのソフトウェアを武器にしたスタートアップが、多くの変革を世界にもたらしてきた。
スマートフォンの爆発的な普及とクラウドや通信技術やセンサーの進歩によって、モノのインターネットが実現可能になり、第二のAppleを目指すハードウェア・スタートアップがシリコンバレーとサンフランシスコに雨後の筍のように生まれている。その状況を取材先のベンチャーキャピタリストが「ハードウェア・ルネッサンスが始まっている」と表現した。

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「See'sってキャンディを知ってるかい?」スタンフォード大学のフォーキャスター(未来予測学者)のポール・サフォー教授はちょっと古いフォードのSUVを運転しながら言った。
雑誌Wedgeの1月号の特集の取材で訪れたシリコンバレーの週末を、同行したカメラマンの小平尚典さんに紹介してもらった教授と過ごすことができたのは貴重な体験だった。

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スタンフォード大学のd.schoolや自動運転を研究しているラボなどを案内してもらった後、教授の車の助手席に乗ってランチに向かった。「美味しい料理がいいかい?それとも食事はテリブルだ(酷い)けどスタートアップの歴史が感じられるところがいいかい?」と尋ねられて、テリブルな食事の方を選んだ。今回の旅の目的は「シリコンバレーのスタートアップのモノづくりのムーブメントを探る」ことなのだからしょうがない。大学のキャンバスの北西に沿って走るサンド・ヒル・ロード沿いにはベンチャーキャピタリストのオフィスが並んでいる。スタンフォードで学んだ学生が、このあたりのベンチャーキャピタルを担当の教授に紹介されて起業することは、ビル・ヒューレットとデイブ・パッカードの頃からさほど珍しいことではない。

IMG_0113グーグルやヤフーの創業時から投資して成功した有名なセコイアキャピタルがあるサンド・ヒル・サークルをぐるっと回って、ウッドサイドのBack'sというアメリカン・レストランに入った。ここはまるでアメリカの歴史博物館のように、壁や天井いっぱいにいろいろなコレクションが展示されている。そして、その一角にグーグルやヤフーが起業を話し合ったというテーブルがある。

前半の取材で、多くのハードウェア・スタートアップに共通することは、既存のハードウェアがインターネットに接続されたらどんな価値が生まれるだろうかという発想だという印象を受けた。いわゆる「モノのインターネット(IoT)」だ。彼らは、「グリルオーブンがインターネットにつながったら?」「ヘルスメーターがインターネットにつながったら?」「玄関の鍵がインターネットにつながったら?」という視点から、あらゆるハードウェアの価値を再定義しようとしている。ハードウェアがクラウドやスマートフォンとつながり、情報をやりとりできるようになれば、スタンドアロンのハードウェアだけでは提供できなかった新しい経験を提供することができるようになる。ハードウェア・スタートアップのファウンダー達は異口同音にそんなことを口にした。

レストランに向かう車の中でそう話すと、教授は頷きながら「See'sってキャンディを知ってるかい?」と言った。「知ってるけど...」と戸惑っていると、「See'sはキャンディーなんだけど、周りをチョコレートで覆っている。チョコレートがハードウェアで、キャンディはソフトウェアみたいなものだ。見た目は同じようなチョコレートだけど、中のキャンディの種類がたくさんあって、食べてみると同じハードウェアでいろんな体験をすることができるだろ?」と答えてくれた。

サンフランシスコのデザイン会社Punchcut(パンチカットとは活字を彫るという意味らしい)は、創業時からデザイン思考のプロセスを取り入れ、クライアントの抱える問題の本質を理解するところから取り組んでいる。クライアントが持っている価値を引き出し、それを製品に反映することが自分たちの仕事だという。取材でインタビューした共同経営者のケン・オルワイラーとジャレット・ベンソンは、IoTの時代においては、すべてがサービス化すると考える必要があるという。テクノロジーの会社はどうしてもテクノロジーばかり考えてしまう。ハードウェアがインターネットにつながり、クラウドやスマートフォンのアプリケーションと連携することによって、どのようなサービスを生み出すことができるかという視点で考えるべきだ。そして、個別のインタフェースデザインだけでなく、全体を通してユーザーが感じるコネクテッド・エクスペリエンスをデザインすることが重要だという。

IMG_0115夕方、教授はゴールデンゲートブリッジのたもとのフォートメイソンにあるThe Intervalというバル(酒場)に連れて行ってくれた。教授は The Long Now Foundation(ロングナウ協会)のボードメンバーで、このバルにはその活動を紹介する展示がある。教授は「1万年時計プロジェクト」について説明してくれた。

人間の感覚で100年とか 1000年とかの単位で物事を考えるのではなく、人類が始まってからの1万年という単位で歴史を振り返り、そして次の1万年に責任を持つべきだ。その象徴としてニューハンプシャー IMG_0116州のワシントン山というところに1万年の時を刻む巨大な時計を作っている。 1995年から始まって、アマゾンのジェフ・ペゾスも参加している。バルにはそのミニチュアも展示されていた。

このバルもまたスタートアップとして開店したばかりだ。責任者のジェニファーは、バルで酒を飲むという経験をゼロからデザインし直したのだという。面白いのは、クラウドファンディングでウィスキーのボトルキープを予約することができることだ。週末で店の中はごった返していて、ゆっくり話を聞けなかったのが残念だ。

ジェニファーに勧められたウィスキーの利き酒セットを飲みながら、久しぶりの西海岸の空気を思い切り吸い込むことができた。

この記事はUX Tokyo Advent Calendar 2014の12/5のために書きましたが、流れ的には(過去の記事ですが)「UI/UXデザインという表現について(肯定論)」のほうが合っていたかもしれません。よろしければついでにお読みください。川手恭輔          
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