デザイン思考で行こう!

Life will find a way, we'll find a way Technology lives.

2015年12月

「2016年はIoTのためのMVNOが加速するか」という記事で予告した月刊Wedge2016年1月号の記事は、次のように結んだ。
うがった見方をすれば 、アップルの狙いはeSIMを提供することによって、3rdパーティのiPhoneやiPadのアプリだけでなく、ハードウェアまでもそのエコシステムに組み込もうとしているのではないかと考えることもできる。いろいろなモノにアップルのeSIMが組み込まれてインターネットにつながる。
人々はiPhoneやiPadを使って、モノからの情報を受け取ったりモノに指示を与えたりする。アップルは、そんな世界を創ろうとしているのではないだろうか。このまま日本のモバイル通信がガラパゴス状態から抜け出せないと、IoT時代のエコシステムもアップルに抑えられてしまいかねない。
7月16日のフィナンシャルタイムスは、「アップルとサムスンは、eSIMカードを製品化するために、移動通信の業界団体(GSMA)に参加する話し合いを最終段階に向けて進めている」と報じた。それをうがって見てみたのは、「モノのインターネットの通信は金にならない」からだ。
スマホ向けの格安SIMを提供するMVNOが、(例えば)NTTドコモに支払うXi(LTE)サービスの2014年度の接続料は、10Mbpsという帯域について月額945,059円だ。それを超えると、1.0Mbpsごとに94,505円増加する。もちろんMVNOにとっては、10Mbpsという帯域ではビジネスにならない。その数倍、数十倍の帯域を調達して、多くの顧客を獲得しなければならない。

それに対しIoT端末は、通信するデータ量が小さく、そのスピードも遅くて構わないケースが多い。また、通信の時間をうまく分散できれば、それほどの帯域は必要ない。

例えば、128kbpsの低速で、1回の通信で50文字(半角)のテキストデータ、例えばGPSによる位置情報などをクラウドに送信するIoT端末を考えてみる。単純に10Mbpsを128kbpsで割れば、同時に78台のIoT端末が128kbpsで接続可能だ。128kbpsで50文字(400ビット)を送信する時間は1/320秒なので、1秒を320台で分割すれば合計25000台のIoT端末が通信することができる。

さらに乱暴な計算を続けると、それぞれの端末が1分間に1回の頻度で通信する必要があるケースであれば、10Mbpsの帯域で150万台のIoT端末に通信サービスが提供できることになる。
このような(乱暴な計算の)例の場合、100万円程度で調達した通信を150万台のIoT端末向けに販売するならば、その調達価格は1台あたり月額1円にも満たない。MVNO事業には通信交換機や課金・認証などの初期投資だけでも数十億円かかる設備を保有し、さらに運用や保守も自社で行う必要がある。

これまでのMVNOの形態で、モノのインターネットのためのモバイル通信サービスを提供することは難しい。
アップルがIoT向けのMVNOに乗り出す?

しかしアップルには、その「金にならないモノのインターネットの通信」に参入する戦略的な意味がある。
ジョブズといえども、iPhoneに匹敵するような大成功をもたらす革新的な製品を、また「発明」することは容易なことではなかっただろう。クックが、スマートフォンの市場を拡大して、iPhoneのシェアをさらに増やすことを最も優先すべきだと考えるのは自然なことだ。iPhoneで得られる経験価値をさらに向上させ、iPhoneでなければならない理由をつくる。

WWDCで発表されて大きな話題を呼んだ定額の音楽ストリーミング配信サービス(Apple Music)も、その戦略の一環だと考えることができる。App StoreやiTunes Storeなどで販売される音楽やアプリなどの売り上げは全体の1割にも満たない。しかし、それらのサービスなくしてはiPhoneのビジネスが成り立たないことは明白だ。Apple Musicから得られる利益も、Appleにとって重要なものではないだろう。元々、Appleとしては利益を度外視しているのではないかと思われるほどの、競合他社に圧倒的な差をつけるための価格設定を狙っていたようだ。

Apple Watchも、そのような視点からAppleにおける、その戦略的な位置づけを考えることができるのではないだろうか。Apple Watchを購入すると「iPhoneでなければならない理由」ができ、その顧客はAndroidへの乗り換えを躊躇する。Apple MusicやApple Watchが、少しずつ人々の生活を変えればいい。それによってiPhoneが、さらに人々の生活になくてはならないものになっていく。
すでにアップルは昨年10月から、ユーザが購入後に携帯通信キャリアとデータプランを選ぶことができる独自のApple SIMが付属したiPadを販売しているが、アップルがモバイル通信サービスを提供しているわけではない。しかしアップルが(例によって半ば強引に)世界各地の携帯キャリアと接続し、MVNOとして「モノのインターネットの通信」を、「インターネットにつながったモノ」をつくろうとする企業に提供することは十分に考えられる。

一般消費者向けの「インターネットにつながったモノ」のビジネスモデルにおいて、その通信をどのように提供するかということは大きな課題だ。モノを購入した後で、携帯キャリアやMVNOからSIMを購入して月々の利用契約をしなければならないとしたら非常に面倒だろう。

「インターネットにつながったモノ」を購入する。そのモノと連携するiPhoneのアプリをApp Storeからダウンロードする。そのサービスを利用するには、アプリの利用料金を支払う必要があるが、それにはモノの通信料金が含まれている。ユーザは通信料金を払うのではなく、モノとサービスを利用することで得られる「新しい体験」に対価を支払う。いろいろなモノにアップルのeSIMが組み込まれてインターネットにつながる。それがiPhoneで得られる経験価値をさらに向上させ、iPhoneでなければならない理由をつくる。

米テスラ・モーターズの電気自動車「モデルS」はインターネットにつながっており、スマートフォンのアプリを使って離れた場所から管理・操作することができる。航続可能な距離や充電状況を確認したり、充電完了の通知を受け取ったり、遠隔操作でルーフの開閉や空調のコントロールをしたり、駐車した場所をGPSによって確認したりすることができる。日本ではNTTドコモのSIMが搭載されているが、テスラのオーナーはドコモにもテスラにも通信料金を支払う必要はない。1,000万円もするモノであれば、通信するデータ量が小さく、そのスピードも遅くて構わないIoT端末の通信料金のコストを、端末本体の価格に算入してしまうことが可能になる。

米国で販売されているサムスンのスマートウォッチGalaxy Gear S2には、eSIMが内蔵(エンベッド)されたモデルがある。その3G/4Gに対応したモデルは、AT&T、Verizon、T-Mobileのいずれかのキャリアから購入し、同時にモバイル通信プランを契約する必要がある。例えばAT&Tで購入する場合は、複数の端末で5Gバイトのデータ通信と無制限の音声通話が利用できるモバイル・シェアというプランが月額50ドルになる。これはスマートフォンとGalaxy Gear S2で一つの契約を共有することなどを想定している。別々に購入したスマートフォンとGalaxy Gear S2をペアリングすれば、スマートフォンを持っていないときでも、Galaxy Gear S2で電話をかけたり、メッセージやeメールを送ったり、スマートフォンへの着信通知を受け取ったりすることができる。T-Mobleで購入する場合は、2年縛りで月額15ドルのモバイル通信料金と15ドルのGalaxy Gear S2の割賦料金というプランがあるが、スマートフォンの契約があればモバイル通信の追加料金は5ドルになる。

一般消費者向けのIoT製品の勝負はこれから

日本の製造業から、一般消費者向けのイノベーティブな製品が生み出されなくなって久しい。スマホエコノミーにおいても、その存在感は希薄になってしまった。
スマホエコノミーのスマートフォンの部品のレイヤーには、村田製作所(チップ積層セラミックコンデンサー)、日本電産(振動モーター)、アルプス電気(オートフォーカスと手振れ補正用アクチュエーター)などの、高い技術力を持った日本のメーカーがいる。皮肉なことに、スマートフォン事業が低迷するソニーも、イメージセンサーを他のセットメーカーに提供する事業は好調だ。
しかし、テスラにしてもサムスンにしても「インターネットにつながったモノ」で可能になることは、まだ「新しい体験」と言えるほどのことではない。"nice to have"かもしれないが"must have"なものではないだろう(まあ、なくても良いものだと思う)。テスラの場合は、その通信料金をユーザが意識することがないので「おまけ」と考えることもできるが、サムスンの場合はビジネスモデルを含めてまだまだ試行錯誤の段階だろう。一般消費者向けのIoT製品の勝負はこれからだ。日本の製造業にとっても反転攻勢に出る大きなチャンスと言える。

2014年10月にパナソニックは、企業向けのMVNOに参入すると発表した。同社は2007年にhi-hoというプロバイダー事業から撤退したが、2013年にスマートフォン向けのWonderlinkというブランドの格安SIMの通信ビジネスに再参入した。これはMVNOではあるが、「通信交換機や課金・認証などの初期投資だけでも数十億円かかる設備」を保有するMVNEと呼ばれる他社(富士通とIIJ)のソリューションを利用したものだ。新しい企業向けのMVNO事業は、これらの設備を自社で保有して「お客様の用途に合わせたフレキシブルな無線通信サービスプラン提供を実現し、当社の無線対応機器および保守・運用サービスと組み合わせ、ハードから通信回線・運用まで一気通貫のワンストップソリューションとして企業向けに提案」するという。

言うまでもなく、パナソニックは多くの一般消費者向けの製品をつくる日本を代表する製造業だ。「金にならないモノのインターネットの通信」を事業として考えるよりも、せっかくの自前のMVNOを武器として活用し、自社の製品をIoT化することによって「新しい体験」の価値を創造することにチャレンジして欲しいと思う。
製造業のイノベーション戦略を考えるには、製品と市場という軸を、それぞれの上位概念である技術とドメインという軸で表すとわかりやすい。,魯▲鵐哨佞水平型の多角化と呼んでいるものに近い。すでに獲得している経営資源やバリューネットワークの多くを活用してプロダクトのイノベーションを行う。
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この,「インターネットにつながったモノ」であり、それに必要な「新技術」とは、モノをインターネットにつなげるためのモバイル通信や、モノと通信するクラウド上のサービスや、そのサービスを経由してモノから情報を受け取ったり指示を与えるためのスマートフォンのアプリに関する技術だ。
これまでハードウェアの価値の向上に集中してきた製造業にとって、 Webサービスやスマートフォンのアプリケーションなどは非常に不得手な分野に違いない。ソフトウェアというと、膨大な投資で開発運用する社内の総務関係や生産管理のITシステム、あるいは機器に組み込まれメカや電気の隙間を埋めるだけのファーム・ウェアと呼ばれるものしか思い浮かばない経営層も多いだろう。自社の事業にとっての、スマートフォンのアプリの重要性など想像もつかない。これは、IoT時代を生き抜こうとする製造業にとって致命的な問題だ。
パナソニックの企業向けMVNOは、パナソニックAVCネットワークスという別会社の事業のようだが、製品事業部との壁は他企業との壁よりも厚いのかもしれない。その壁を壊すことが、「アプリの力」以上に必要なことだろう。

「2016年はIoTのためのMVNOが加速するか」という問いについては、「モノのインターネットのための通信は金にならない」ので「これまでのMVNOの形態で、モノのインターネットのためのモバイル通信サービスを提供することは難しい」だろうと答える。しかし、一般消費者向けの製品をつくる製造業において、「インターネットにつながったモノ」をつくるためのバリューネットワークとしてのMVNOを水平統合するという戦略は検討する価値があるのではないだろうか。

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今年9月の経済財政諮問会議における携帯電話の料金に関する安倍首相の発言を受けて、利用者の負担を減らす方策を話し合うための、大学教授ら有識者による総務省主催の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」が10月19日に発足した。その4回の会合(1回は非公開)を追ってみた。

携帯3大キャリアの協調的寡占は続く (Wedge Infinity)
腰砕けになったスマホ料金値下げの有識者会議

全体を通して、ライトユーザや長期利用者向けの料金プランがないことや「実質0円」の行き過ぎた値引きなどの表面的な問題の議論に終始し、本質的な問題の明確化がされていなかった。結果的に、そのまま問題の解決を携帯キャリアに要請しただけで終わってしまった。
  • ライトユーザや長期利用者向けの料金プランを導入すること
  • 通信の契約と一体化した端末の値引きや料金プランを理解しやすくすること
  • MNP利用者への行きすぎた端末購入補助を適正化すること 
総務省の裁量で割り当てられた電波を、大手携帯キャリアが既得権として独占している日本の携帯通信市場には自由競争が存在せず、市場原理が働いていない。大手携帯キャリアによる協調的寡占状態を解消しなければ本質的な問題解決にならない。

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9月末にWedge Infinityにスマホエコノミーを読み解くという記事を寄稿してから、しばらくIoTのためのモバイル通信について考えてきた。

スマホエコノミーを形成する事業領域は、スマートフォンなどの端末とクラウド、そしてその間を取り持つ通信の3つに分類することができ、それぞれが大きく3つのレイヤーを持つ。例えば、スマホエコノミーの覇者となったアップルの事業領域は次のようになる。

apple
アップルの事業領域
アップルは、新しい技術を部品として世界中から調達し、それをOSとアプリによってユーザーが体験できる価値に変換する。例えば、iPhone6sの3D Touchと呼ばれる新しい操作方法では、指でディスプレイを押したときに、その圧力の大きさによって指にかすかな振動が返ってくる。この機能は、それぞれ別の部品メーカーの、感圧センサーと振動モーターを組み合わせて実現されている。
さらに、アップルはiCloudというiOSと連携したクラウドサービスを提供している。 iCloudを利用すると、アップルが提供するアプリのデータや写真や音楽のバックアップや、iPhoneやMacなどのアップルの端末間での同期を自動的に行うことができる。
アップルは、OSとアプリそしてクラウドサービスを自社で提供することによって、最大の収益源であるiPhoneに、他にない価値を付加することに成功している。 
(スマホエコノミーを読み解く) 
スマホエコノミーでは、人々は常にインターネットにつながったハンドヘルドのコンピュータを携帯し、ニュースや音楽や動画やゲームなどのコンテンツを消費するようになった。そしてソーシャルネットを利用して、友人や家族や見知らぬ人と頻繁にコミュニケーションを行っている。

H2H
スマホエコノミーのモデル

人々が常にインターネットにつながったスマホエコノミーでは、IoTすなわちモノがインターネットにつながるということによってヒトとモノがつながる。
hitomono
ヒトとモノがつながる
スマホでないものを、それがハードウェアでなければならない理由を明確にし、そしてクラウドにつなげて関連する情報やコンテンツをクラウドと交換する。人々が常に携帯しているスクリーンを備えたスマートフォンで、そのハードウェアや情報をコントロールすることができるようになる。スマホエコノミーの顧客に、これまでになかった新しい体験を提供できる環境が整ってきたのではないだろうか。
(スマホエコノミーを読み解く)
モノをインターネットにつなげるための通信手段は、有線・無線のLANや、ブルーツゥースなどの近距離無線でスマートフォンを介した接続も考えられるが、いつでもどこででもつながるモバイル(携帯)通信が最適だ。

携帯キャリアのネットワークと接続し、スマートフォン向けの格安SIMを販売するMVNOと呼ばれる通信事業者は、交換機や課金・認証のための設備などを保有し、さらにその運用や保守も自社で行っている。MVNOは携帯キャリアからデータ通信を帯域という単位で購入するが、SIMのエンドユーザーには、例えば「月に2Gバイトまでの通信ができるサービスが3000円」というようにデータ量で販売している。しかし、このスマートフォン向けの通信の料金プランは、データ量が非常に大きいコンテンツを利用することを前提にして設定されていて、実際にそこまで使わなくても定額の料金を支払わなければならない。通信するデータ量が小さくそのスピードも遅くて構わないIoTでは、このモデルは使いにくい。

2015年10月にIoT向けのMVNO事業を開始したソラコムというスタートアップ(ベンチャー企業)は、MVNO事業のデータセンターに必要な機能を、自社で開発したソフトウェアで実現してしまった。それによって初期投資や維持費を大幅に削減できたという。ソラコムのSIMを使えば、1日10円のSIMごとの基本料以外は1メガバイトあたり0.2円から1円の課金となるが、すべてのSIMの合計のデータ通信量で計算される(SIMごとの1メガバイト以下の未使用分も無駄にならない)ので、事業者は実際に使った分だけを支払えば良い。
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デジタルリマスタリングのプラットホーム

これで、このブログで日本の製造業のイノベーションの1つの手段として提案してきた「モノのデジタルリマスタリング」のためのプラットホームがすべて揃ったことになる。(AWSはアマゾンが提供するクラウドプラットホーム)
インターネットが出現するまで、コンスーマ製品をつくる一般的な製造業は造った製品を流通業に販売するだけで、その製品の顧客(ユーザ)との接点はほとんど持っていなかった。接点といえばTVなどのマスメディアを利用した広告などの一方的なものばかりで、双方向性のあるものは困ったときだけ顧客から電話をかけてくるコールセンターぐらいだった。これでは流通業やサービス業のように顧客の経験に関与することができず、自社の提供する製品に関連して顧客が経験する価値を高めることは不可能であり、経験経済の時代に製造業が生き残ることはできないことになる。
しかし、インターネットによって製造業が顧客との接点を持つことが容易になった。インターネットを利用し、製品(モノ)に関連するコンテンツやソリューションを提供して顧客との接点を作り、顧客がモノを使う経験に積極的に関与してその価値を最大化することができる。
デジタルリマスタリングの3つのステップ 
  1. モノに関連する情報やコンテンツをスマートフォンで扱うことによって可能になる「新しいユーザ体験」を描く
  2. バリュープロポジションを定義する
  3. それを実現する製品「ハード」「ソフト」「サービス」を再定義する 
2014年3月の記事では、1は「インターネットで扱う」だったが、現在のスマホエコノミーにおいてはスマートフォンに置き換えた方がわかりやすいだろう。

米テスラ・モーターズの電気自動車「モデルS」はモバイル通信(SIM)によって常時インターネットにつながっており、スマートフォンのアプリを使って離れた場所から管理・操作することができる。航続可能な距離や充電状況を確認したり、充電完了の通知を受け取ったり、遠隔操作でルーフの開閉や空調のコントロールをしたり、駐車した場所をGPSによって確認したりすることができる。テスラはヒトとつながっている。しかし、それで可能になったことは、あまり「新しいユーザ体験」とは言い難い。あればいい(nice to have)が、なくてはならない(must have)ことではないだろう。

「ヒトとモノがつながる」IoTのためのプラットホームは(一応)揃った。あとは、人々の生活になくてはならないものになる「新しいユーザ体験」を描けばいいだけになった。 

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9月の経済財政諮問会議における携帯電話の料金に関する安倍晋三首相の発言を受けて、利用者の負担を減らす方策を話し合うために10月に発足した総務省主催の有識者会は、4回の会合を経て、端末の「実質0円」や販売価格を超える「キャッシュバック」そして系列販売店に払う「販売奨励金」の制限などを盛りこむ方向で提言をまとめ、それを受けて高市早苗総務相が12月18日に料金の引き下げ策を公表するという。(10日 朝日新聞デジタル

この提言とは別の動きとして、高市早苗総務相が第4回の有識者会議で、「MVNOサービスの低廉化につながるように、加入者管理機能の開放についての事業者間協議のさらなる促進を図るということで、パブリックコメントを行いたい」との方針を示した。加入者管理機能の開放とは、MVNOが、電話番号と端末識別番号、所在地情報等を管理するデータベース(HLR/HSS)の独自運用や電話番号の発行ができるようにすることを意味する。
総務省は、「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」の改定案のうち、「開放を促進すべき機能」に関して、「ICTサービス安心・安全研究会 携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」における議論を踏まえ、「開放を促進すべき機能」(案)を作成いたしました。
 つきましては、同案について、本年11月28日(土)から同年12月25日(金)までの間、意見を募集します。
「開放を促進すべき機能」とは、アンバンドル機能(接続料を設定すべき機能)に該当しない機能でも、一定の要件を満たす場合は、接続又は卸役務による提供が望ましいため、事業者間協議の更なる促進を図るものとして定める機能のこととされ、以下の5項目が挙げられている。
  1. 料金情報提供機能
  2. 携帯電話のEメール転送機能
  3. パケット着信機能
  4. 端末情報提供機能
  5. HLR/HSS連携機能
このガイドラインは、5月22日に公布された「電気通信事業法等の一部を改正する法律(平成27年法律第26号)」の施行(1年以内)までに整備しなければならない省令やガイドラインの一つになる。

現在、MVNOが独自の料金プランを設定できるのは、自社設備を携帯キャリアのネットワークに接続したデータ通信についてだけだ。通話料金については、電話回線ネットワークとHLR/HSSを保有する携帯キャリアから、通話料に応じた従量制の料金プランしか提供されていない。そのためMVNOは、携帯キャリアのような家族割りや定額プランを提供することができない。

mvno
HLR/HSS連携機能の開放が実現すれば、MVNOが独自の音声通話割引サービスを提供したりするなどの自由度が拡大するだけでなく、MVNOが海外のキャリアに対応した独自のSIMを発行したり、複数のキャリアのネットワークを使い分けたりするサービスが可能となるという。

この有識者会議の目的は携帯通信料金を下げることであり、会議でもIoTについてはほとんど議論されていない。しかし、HLR/HSS連携機能が開放されることによって、MVNOが独自のSIMを発行できるようになることは、日本のIoT関連事業にとって大きな意味を持つ。

続きは少し先になるが、12月20日頃発売の月刊Wedge 2016年1月号のWedge Reportで。MVNOのフロンティアである日本通信の福田社長と、注目が集まるクラウドMVNOのソラコムの玉川社長にもお話をお伺いした。

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