デザイン思考で行こう!

Life will find a way, we'll find a way technology lives.

2016年01月

依然としてデジタルカメラの販売台数の落ち込みは止まっていない。特に低価格のコンパクトタイプのデジタルカメラは、完全にスマートフォンのカメラに食われてしまった感がある。間もなく、徹底的なコストダウンとブランド力によって生き残った1社か2社のメーカが、なんとか残存者利益を得ることができる程度の市場になってしまうだろう。そんな中、カメラメーカの生き残り戦略として興味深い2つのデジタルカメラが発表された。

その1つは、年初にラスベガスで開催されたCESにニコンが参考出品したアクションカメラKeyMission 360だ。

GoProイーターとなるかニコン全天球撮影アクションカメラ(Wedge Infinity)


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ニコン KeyMission 360
(ニコン報道発表資料より)

記事の更新はTwitter (@kyosukek)でお知らせします。  

iPhoneの勢いが鈍化したからではないだろうが、天国からこんなプレゼンが届いたので日本語に翻訳してみた。
僕が左手に持っているのが何かわかるかい? これは新しいデジタルカメラなんだ。

うーん、みんな、ちょっとガッカリしたみたいだね。まあ、少し話を聞いてほしい。そうすれば、きっとこのカメラが欲しくなるはずだから。

みんな写真を撮るのが大好きだよね?

楽しい旅行とか、自分の子供が遊んでるところとか、結婚式とか、そんな残しておきたい思い出は一眼レフで撮っているかな。ちょっと面白いものを見つけたときとか、美味しいパンケーキとか、そんな写真はスマートフォンで撮ってすぐに共有してるよね。もうPoint & Shoot(コンパクト・デジタルカメラ)は、あまり使わなくなっちゃったかもしれないね。

ちょっといくつかの写真を見てほしい。いい写真だろう?

これはサッカーをやってるところだね。かなり遠くから撮ってるようだけど、一生懸命な表情が可愛いよね。まわりも綺麗にぼけて、子供がすごく引き立ってる。こっちはシュートする瞬間をうまく捉えてる。

まるでプロ見たいだろ?サッカーしてる子供も写真も。

この花嫁の写真はどうだい?髪の毛や肌、そしてドレスやケープの、それぞれの質感の違いがよくわかるだろ。光の柔らかさがいいよね。

こっちもいいね。これは逆光だね…これは…

写真って本当にいいね、そう思うだろ?

こんな写真を撮るのはスマートフォンだとちょっと難しいかもしれない。一眼レフで撮り方を勉強すれば、誰にでも撮れるようになる。少し高価なPoint & Shootでも、頑張って細かい設定をすれば撮れる写真もあるかもしれない。でもそれじゃPoint & Shoot(狙って撮るだけ)って呼べないよね。

実は僕たちは、ほんとうのPoint & Shootをつくったんだ。さっき見せた写真は、ぜんぶこのカメラで撮ったんだ。それも一つ一つ細かい設定なんてしていない。

写真を撮っているところを見てほしい。

画面に子供が小さく写っているね。こうすると、ほら顔がアップになっただろ。そしてこんな感じで周囲をぼかすことができる。それでシャッターを切ればいい。こっちは走ってる子供を追いかけてる。こうするだけで、ちゃんと子供にピントが合ったままになる。ボールが転がってきたから、こうすれば連続して写真が撮れる。この写真はその中から選んだ一枚なんだ。

こんな小さなカメラで、まるで一眼レフで撮ったような写真が撮れるんだ。それもすごく簡単だろ?

誰にでもこんな写真が撮れるようにするには、ユーザインターフェイスを直感的にすることが重要なんだ。みんな、カメラを使いこなすために勉強なんてしたくないよね。簡単にすごくいい写真が撮れるカメラがいいカメラだと思うだろ?

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テクノロジーは、難しいものをつくるためのものじゃないんだ。難しいことをすることが楽しい人もいるだろうけど、ほとんど人はすごいことを簡単にやってくれることを望んでいるはずだ。写真を撮ることだけに集中しなければならないとしたら、せっかくのその大切な時間を楽しむことができなくなってしまうじゃないか。写真を撮るときに、解像度とか、ISO感度とか、ホワイトバランスとか、そんなことを考えなきゃならないなんておかしいと思わないかい?

どうだい、少しはこのカメラが欲しくなったかい?

でも、このカメラはそれだけじゃないんだ。

みんなスマートフォンで写真をとってSNSとかで共有してるけど、家族の写真や、プライベートなイベントや旅行、それから日常のスナップなんかもたくさん撮ってるよね。そんな写真はどうしてるのかな?パソコンや、もしかするとメモリーカードに置きっぱなしになって、あまり見る機会がないんじゃないかな?

家族で写真を見ながら思い出を語り合ったりする幸せな時間がなくなっちゃったんじゃないかと思うんだ。子供が大きくなった時に、それまでの写真をどうやってプレゼントするんだい?お父さんやお母さんの写真をどうやって引き継ぐんだろう。

そんな大切な写真は、パソコンやメモリーカードに置きっぱなしにしてはいけない。クラウドに置いておけば、スマートフォンから、いつでもどこでも見ることができるし、家族で共有することだって簡単にできる。でも、デジタルカメラで撮ったたくさんの写真をパソコンにダウンロードして、それからクラウドにアップロードするのは面倒だよね。

このカメラは、撮った写真をクラウドにアップロードする必要がないんだ。だってメモリーカードに記録するんじゃなくって、初めからクラウドに記録してしまうんだから。通信? そんなことは気にする必要はないよ。

撮ってすぐに共有したい写真はスマートフォンのカメラに任せておこう。このカメラは、ずっと残しておきたい大切な写真を撮る時に持っていってほしい。まあ、写真はクラウドにあるから、共有すことも簡単だけどね。

でも一番大切なことはまだ話していない。

どんなにいい写真を撮れても、そしてその写真をどんなに簡単にクラウドに置けたとしても、それだけだったらいままでのデジタルカメラと大した違いはない。いままでのカメラは、写真を撮ることだけにフォーカスした、単なるモノだったんだ。写真というファイルをつくるモノだったんだ。クラウドに記録するって言い方もやめようと思う。どこに記録するかが問題ではなくて、いつでもどこでも写真を見て楽しむことができればいいんだから。

僕たちはファイルをつくるモノを作ったんじゃない。みんなが忘れかけている大切な写真の価値を取り戻すための新しい体験を創ったんだ。僕は昔、携帯ミュージックプレイヤーを創ったわけを「音楽は人々の人生の一部だから」って言ったけど、写真もみんなの人生の一部だよね。このカメラがタイムラインに記録した写真が、人々にどんな体験を提供するのか、このビデオを見て欲しい。
手元のビデオには、人生の写真がタイムラインに並べられて、家族で過ごした時間の写真が家族全員のタイムラインで共有されたり、自分の幼い頃の写真が並んだタイムラインを両親からプレゼントされたり、亡くなった祖父のタイムラインを家族に引き継がれていくといったシーンが描かれている。 

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日本でもIoT向けのモバイル通信を提供するMVNOが現れ、これから一般消費者向けのIoT製品に取り組むスタートアップも増えるだろう。しかしハードウェア・スタートアップには、ウェブサービスのスタートアップとは違う難しさがある。

2011年5月に、スタンフォード大学を一学期で退学したばかりのマックス・マーマーが中心となって、シリコンバレーの650社以上のスタートアップへのインタービューを基に、スタートアップ企業がどうすれば成功するかを詳しく分析したスタートアップ・ゲノム・レポートが発表された。スタンフォード入学前の18歳のマックス・マーマーに初めて会った「アントレプレナーの教科書」の著者 スティーブ・ブランクは、その聡明さと見識に驚愕したという。

マーマーのグループは追加の調査分析を行い、スタートアップ・コンパスという、KPIに着目したスタートアップ向けの業績評価ツール(ウェブサービス)を開発した。そのツールはスタートアップコンパス社のサイトで利用できる。マーマーはスタートアップコンパス社にライターという肩書きで参加しており、スタートアップ・ゲノム・レポートやその後のレポートも同社のウェブサイトから入手することができる。→リンク

ビッグアイデア

ちょうど2年前に、グーグルがNestというインターネットにつながったサーモスタットと火災報知器のスタートアップを32億ドルという高額で買収したことが大きな話題になった。そして、その年(2014年)の7月にGoProが株式上場を果たすと、ベンチャーキャピタルだけでなくエンジェルと呼ばれる個人大口投資家もハードウェア・スタートアップに注目し始め、それまでウェブサービスが中心だったシリコンバレーのスタートアップのブームが、ハードウェアの分野にも広がり始めた。



3Dプリンターによる新しい試作プロセスの出現や、中国の深センなどのグローバルな製造インフラ(EMS)が、起業まもないスタートアップでも利用できるようになったこともそれを後押しした。
多くのベンチャーキャピタリストは、投資に対するリターンが減って資金が枯渇し始めており、そしてビッグアイデアを追求する起業家の数が減っているように思えると嘆いている。
これはマックス・マーマーが、2012年7月にハーバード・ビジネス・レビューに寄稿した"Reversing the Decline in Big Ideas"(ビッグアイデアの減少に歯止めをかける )の冒頭の言葉だ。 →リンク
起業のコストが劇的に下がり、まったく新しい層の起業家が会社を創ろうとしている。「取るに足らない会社」を始めようとする創業者は、10億ドル規模の会社を作ろうと目論む起業家とは違う。そのような創業者は世界を変えたいとは思っていない。彼らは家族を養ったり、車を買ったり、自由を得たりするために必要なお金を稼ぎたいだけなのだ。彼らは、情報経済社会におけるパパママ企業の経営者に過ぎない。ただテクノロジーのおかげで、これまでの店舗経営より効率的で収益性が高くなっただけだ。彼らはレストランや美容院を始める代わりに、多くのレストランや美容院で使えるクーポンアプリを作る。
シリコンバレーのベンチャーキャピタル、Yコンビネータの共同創業者のポール・グラハムは、良いアイデアは最初バカげたものに見えると言っている。ほとんどの人がそれが価値があると認識していないアイデアこそが最高だと。しかし、そのバカげたものに見えるアイデアは、実際にバカげていて人々に使ってもらえないものかもしれない。スタートアップの文化では、それを確かめるために早く製品をつくって市場に投入しろといわれる。資金を使い果たす前に、それが実際にバカげているかどうかがわかる。

プロダクト・マーケット・フィット

ウェブサービスとハードウェアビジネスでは、プロダクト・マーケット・フィット、つまり製品を、狙う市場を満足させることができるものに育てるプロセスが大きく異なる。エリック・リースは、著書リーンスタートアップの中で、プロダクト・マーケット・フィットのために、製品をプロトタイプの段階から実際のユーザーに使ってもらって、「構築 - 計測 - 学習」のサイクルを繰り返すことが重要だと説いた。
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ウェブサービスに必要なソフトウェアは、まず十万円程度のパソコンがあれば開発できる。そのプロトタイプや、必要な最小限の機能だけを実装したサービスを公開して、実際のユーザーに使ってもらうためには、開発したソフトウェアをインターネットに接続されたサーバー上で動かす必要があるが、こちらも最初は年間数万円から数十万円程度でアマゾンのAWSなどのサービスを利用することができる。確かにウェブサービスの起業コストは劇的に下がった。そして、得られたフィードバックによって改良した製品を公開することも、ウェブサービスであれば毎日でも可能だ。

また、ウェブサービスのビジネスモデルは、サービスの利用が完全に無料であったりフリーミアムであったりする。プロトタイプや、必要な最小限の機能だけを実装したサービスを、多くのユーザーに使ってもらうことも比較的容易だ。

しかしハードウェアのプロトタイプの場合は、限定的なモニターに試してもらうという程度になってしまうだろう。実際のユーザーに使ってもらいフィードバックを得るには、製品を購入してもらわなければならない。イノベーターやアーリーアダプターを想定したものであったとしても、要求される製品の完成度はウェブサービスの場合とは比べものにならない。

iPodやiPhoneの例を見ても、ビッグアイデアのプロダクト・マーケット・フィットには少なくとも3年はかかると考えたほうがいいだろう。その時間で、人々の思いを積み上げ、製品や連携するサービスに改良を加えて「構築 - 計測 - 学習」のサイクルを繰り返す必要がある。そして徐々に、その価値が人々に理解されていく

時期尚早な規模拡大

ハードウェア・スタートアップにとって、3DプリンターやEMSを利用できるようになったとはいえ、「構築 - 計測 - 学習」のサイクルを繰り返すには、会社設立時に集めた数百万円程度のシードマネーだけででは不十分だ。 最初の製品が売れなければ、次のサイクルのための製品を作るための資金を獲得することも難しくなる。
投資家がニッチだと考えていた市場が、考えていたよりも大きかったことに気づくこともある。エアーベッドと朝食を提供するサービス(AirBnB)が、貸別荘などのバケーションレンタル市場やホテル業界を脅かす10億ドル規模の企業に成長すると想像することができただろうか。多くの目利きの投資家も想像することができなかった。 
 スタートアップ・ゲノム・レポートによると、スタートアップが失敗する一番の原因は、時期尚早な規模拡大だったという。顧客、製品、チーム、財務、ビジネスモデルというスタートアップの5つの要素のうち、製品における「時期尚早な規模拡大」は次のように説明されている。
解決しようとする問題と解決策(製品)が合致しているかを検証しないまま製品を作り、プロダクト・マーケット・フィットの前に販売に投資し、たくさんの「なくても良い」機能を追加する 
ビッグアイデアに取り組むハードウェア・スタートアップは「時期尚早な規模拡大」の誘惑と、時間がかかるプロダクト・マーケット・フィットの重要性とのジレンマを克服しなければならない。ハードウェアの場合、初めから誰でもその価値を理解することができる「そこそこのアイデア」で「取るに足らない会社」を始めるスタートアップの割合がさらに増加するだろう。

大企業が学ぶべきこと

スタートアップだけでなく、デジタルコンバージェンス(デジタル化による産業融合)の大きな波に乗り遅れてしまった日本の大手製造業にとっても、IoTは復活の大きなチャンスにちがいない。

「我々は消費者向け製品の分野でもイノベーションを起こしていく」「IoTは大きなビジネスの可能性がある。誰もが驚くような製品を生み出せるのか、各事業部にどういう商品展開が可能か検討してもらっている」ソニーの平井社長がCESの会場でこう話したという(ニュースイッチ→リンク)。

かつてソニーの「社内のスタートアップ」は、ウォークマンというバカげたものを作り出し、そのプロダクト・マーケット・フィットに成功した。再び誰もが驚くような製品を生み出すためには、スタートアップ・ゲノム・レポートが発見した次の事柄を思い出す必要がある。
  • 最も成功しているスタートアップは少なくとも一度ピボットしている(ピボットとは、スタートアップが、そのビジネスの主要な部分を変更すること)が、大企業は「社内のスタートアップ」に対してピボットを許さない傾向にある。
  • 異なったタイプの市場や製品には異なったタイプの創業者やリソースが必要だが、大企業はその本業から学んだことを、イノベーションの取り組みに反映しようとして失敗を招く。
  • スタートアップが失敗する一番の原因は時期尚早な規模拡大だが、大企業は「社内のスタートアップ」に対して早すぎる規模拡大を強いる傾向にある。
  • 迷走するスタートアップは顧客が自分たちの製品を欲しがっていると証明することに躍起になるが、成長するスタートアップは顧客の発見に注力する。大企業は最初の市場調査だけで実行に入り、発見と検証という2つの重要な段階を忘れる。
  • 収益は検証の重要な指標だが、スタートアップがそれに固執しすぎると、機会を見逃したり成長につながらないことを始めたりする。大企業は新しい製品やサービスの重要な提供価値ではなく、収益にフォーカスする傾向にある。
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数年前、メーカに勤務するコンサルタント嫌いの友人に「コンサルタントをやるなら読まなければ」と言われて読んだ本(墨子)の森 三樹三郎氏の訳者解説に、次のような興味深い記述があった。
我が国の戦国時代の浪人は、たとえば真田幸村や後藤又兵衛などのように、槍一筋を生命とする武士であったが、中国の戦国時代に発生した浪人は、いわば舌一枚を生命とする弁士であった。なぜこのような違いが生まれたか、その理由は様々あるにしても、根本的なものは地理的条件であったように思われる。我が国のように、狭い土地に多数の群雄がひしめいているところでは、直接的な武力が一切を決定する。ところが、あの広大な中国では、直接的な武力よりも、ひろい意味での戦力、つまり政治力、経済力といった要因が、より優位を占める。それは過去の日中戦争が如実に示している。したがって、ここでは槍一筋の武士よりも、舌一枚を生命とする弁士に対する需要度の方が高かったわけである。

このようにして中国の戦国時代に発生した多数の文化的浪人、失業インテリたちは、かれらの政治に対する抱負や、経済政策を資本として、諸侯の間を渡りあるき、その売り込みに努力した。さしずめ彼らは国家経営を専門とするコンサルタントであったいえよう。「諸子百家」と呼ばれる人々は、このような文化的浪人である、コンサルタントであったわけである。
前半の部分は、現代の日本の企業間競争にあてはめても良いだろう。
  • 日本国内にひしめき合う企業間の競争においては、戦術遂行に向いた、直接的な戦力となる人材が必要とされ育つ
  • グローバルな競争においては、広い意味での戦力、つまりビジョンや戦略立案能力を持った人材が必要とされ育つ
グローバルな競争のなかで企業戦略の立案やその遂行のノウハウを習得した人材が、何らかの理由で文化的浪人や失業インテリとなり、さらに経験を積んでゆくことによって孔子や墨子のような「諸子百家」となる。

コンサルティング会社の創業者には諸子百家のような経歴を持ち、実際に企業の中で働いた経験の中から、戦略の立案やその遂行についての新しい考え方や方法論を編み出した人がいる。そして、それを資本にしてコンサルティングを生業としつつ、さらにスキルを磨いてゆく。そのようなコンサルタントは、クライアントの抱える様々な課題に対応することができる柔軟性や応用力が身に付いてゆく。

コンサルティング会社の多くは、その確立された方法論を商品として売り物にしている。商品にするためには、その方法論を繰り返し利用できて、いろいろな状況や条件の下でも使える汎用性を持つようにパッケージ化する必要がある。実施例を商品価値として積み上げ、各々のコンサルタントの経験やスキルに関わらず売れるものにしてゆかなければならない。しかしその過程で、その考え方の本来の価値が見えなくなってしまったり失われてしまうことがあるように思う。

本を薦めてくれた友人にコンサルタント嫌いの理由を聞くと、いくつかのテーマでコンサルタントとの付き合いがあったが、友人の会社が抱えている問題の本質を理解しないまま、そのパッケージを押し付けてきたり、あるいは提携しているらしきITベンダーのシステムを売り込むためとしか思えない提案をしてきたという。

諸子百家は舌一枚を生命とする弁士だとしても、舌先三寸ではクライアントの信頼を得ることはできない。先輩のコンサルタントのアシスタントとしていくつかの事例を経験しただけでは、それらの事例と異なる案件に対応することは難しいだろう。もちろん、コンサルティング会社のすべてのコンサルタントが、実際に企業で働いた経験を持つべきだということではない。

次の5つのステップは、デザインコンサルティング会社IDEOにおいて実施されているディープダイブとよばれるデザイン思考のプロセスだ。
  1. その市場、クライアント、テクノロジーを理解し、そして与えられた問題に関して認識されている制約事項を理解 する。

  2. 現実の生活における人々を観察し、現在提供されている製品やサービスでは満たされていない潜在ニーズがどこにあるかを探し出す。

  3. それまでになかった新しいコンセプトとそれを使うであろう顧客を視覚化する。

  4. プロトタイプを評価し洗練することを何回も素早く繰り返す。

  5. 新しいコンセプトを市場に出すために製品化する。
この1と2は、一般のコンサルティングにとっても必要不可欠なことだ。与えられた課題がクライアント企業の業務に関することであれば、2の「人々」はその業務を担当する社員で、クライアント企業のプロダクトに関するものであれば、それはクライアント企業の製品やサービスを利用する顧客だ。

クライアント企業から与えられた課題についても鵜呑みにせずに、実はその裏に本当の問題が潜んでいるかもしれないという疑いを持つことも必要なことだ。IDEO社のコンサルティングは、企業のトップマネージメントへの提案となることが多いようだが、IDEOのブランド力もあって、クライアントにとって少々耳障りな問題点の指摘も受け入れられるかもしれない。

そんな面倒なことをするよりも、投げられた課題に素直に取り組み、クライアント企業の担当者が社内への説明や成果報告がやり易いようにまとめるコンサルティングをするほうが楽だと考えるのも無理はない。かくして、友人のようなコンサルタント嫌いが生まれることになる。

森 三樹三郎氏は、封建諸侯の国内には、まだまだ世襲的身分の伝統が残っており諸子百家のような浪人の入り込む隙がなかったので、彼らは国家経営の直接担当者となることをあきらめてコンサルタントたることに満足するほかはなかったとも書いている。

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