デザイン思考で行こう!

Life will find a way, we'll find a way technology lives.

2016年07月

モノづくりのデザイン思考 (連載 8)

製品のコモディティ化や経済のグローバル化が急速に進み、 単一の製品や技術のみで差別化をはかり、そのアドバンテージを長期間にわたって維持してゆくことが難しい時代になりました。その困難を克服するためには、一般消費者向けの商品をつくる製造業は製品だけではなく、それを利用することによってそれぞれの顧客が感じることができる豊かな経験を提供していかなければなりません。

デジタル化されたコンテンツや情報を記録したり保存したり伝達したりするメディア(媒体)の変化が、市場に破壊的なイノベーションを起こしてきました。音楽市場に破壊的なイノベーションを起こしたiPodは、音楽というコンテンツの流れを変えることによって、人々にそれまでになかった新しい経験を提供しました。

かつて音楽はミュージックショップでCDという物理メディアで売られており、外出先で音楽を楽しみたい人は、選んだCDを持ち出して携帯型のCDプレーヤーで音楽を聴いていました。MDが普及していた日本では、MDにコピーして携帯型のMDプレーヤーで聴いていた人も多かったと思います。

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2001年1月のマックワールドエキスポで、スティーブ・ジョブズは「Macはデジタル時代のライフスタイルにおけるハブとなって、いろいろなデバイスに素晴らしい価値を与えるだろう」とiTunesというMac用のアプリケーションソフトウェアを紹介しました。それは、iTunesを使ってCDの音楽をMacに取り込んで「管理」し、「編集」した音楽をCD-Rに焼き付けて携帯型のCDプレーヤーで楽しむことができるという提案でした。

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アップルは、音楽というコンテンツの流れに「管理」と「編集」のための新しい機能を追加しました。そして2001年10月にiPodが発売され、1,000曲の音楽と編集したプレイリストをそのまま持ち運べるようになりました。スクロールホイールという画期的なユーザーインタフェースを備えたiPodは「どこででも(1,000曲の中から)その場で選んだ音楽を聴くことができる」という新しいユーザー体験を提供しました。
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2003年4月にiTunes Music Storeが開始されると、CDによる音楽の売り上げは徐々に落ち込んでいきました。デジタル音楽配信サービスによって、単に購入する音楽のメディアやビジネスモデルが変化しただけでなく、それまでアルバムというまとまった形で購入していた音楽は、好きな楽曲だけを選んで購入して楽しむものになり、それによって人々の音楽経験も大きく変化しました。

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そしてウォークマンに取って代わったiPodも、あっというまにアプリケーションの一つとしてiPhoneに吸収されてしまい、さらにストリーミング配信がインターネットによる音楽配信サービスの主流になりつつあります。

デジタル・メディアが変化するとき、その対応に遅れをとった企業が衰退したり、新たなプレイヤーがその市場に参入したりする状況をデジタル・コンバージェンス(産業融合)と呼びます。いったんデジタル・コンバージェンスが起きた市場では、技術やインフラの革新が継続的に起きるようになり、さらなる変化を起こしやすくなります。 その市場の次の変化を自ら起こし勝者となるには、製品(モノ)が提供する機能的な価値だけでなく、その製品に関連して経験する「コト」によって顧客が得られる価値にまで視点を拡張して製品をデザインする必要があります。

これまで一般消費者向けの商品をつくる製造業は、造った製品を流通業に販売するだけで、その製品を購入した顧客との接点はほとんど持っておらず、顧客の経験に積極的に関与することができませんでした。しかし、インターネットによって製造業が顧客との接点を持つことが容易になりました。人々は、インターネットにつながったスマートフォンを常に携帯し、ニュースや音楽や動画やゲームなどのコンテンツを消費し、そしてソーシャルネットを利用して、友人や家族や見知らぬ人と頻繁にコミュニケーションを行っています。

この接点を活用して、製品に関連するコンテンツや情報の新しい流れをつくり、その流れに合わせて製品を再定義することによって、製品のデザインに経験のデザインを含めることができます。この連載(モノづくりのデザイン思考)では、その考え方を「モノのデジタル・リマスタリング」と呼び、イノベーションに挑戦する企業(製造業)が、新しい経験価値をデザインするための方法として、前回の多角化戦略の図で示した水平型の多角化を念頭に考えて行きます。

ご相談やお問い合わせは、contact に @ と ibornb.red をつけたアドレスまでメールでお寄せください。

お断り これは連載のために過去の記事を書き直したものです。

米国では、これまで商用のドローンの飛行を厳しく制限してきた連邦航空局(FAA)が、6月にその運用ルールを発表(発効は8月)した。日本でも昨年の12月にドローンを対象にした「改正航空法」が施行されており、いよいよドローンの商業利用が日米で本格化することになる。

Wedge8月号の「ドローンが起こす空の産業革命」という特集で「急成長するドローン市場の展望」という記事を担当し、関連のビジネスの現状と今後の課題についてレポートしました。(月刊Wedge紹介ページへのリンク

そこで書ききれなかったドローンのアプリケーション(応用分野)の「i-Construction」と「精密農業」について、Wedge Infinityで補足しました。

ドローンが起こす空の産業革命、次に狙う市場は農業?(Wedge Infinityへ)

農業などのいろいろな産業分野への応用を柔軟に考えることによって、新しいタイプのドローンと、それを活用したアプリケーションの開発も進むに違いない。

記事の更新はTwitter (@kyosukek) でお知らせします。  

印象に残った言葉

「日常生活におけるドローンの活用機会を開拓して人との共生を進める必要がある」

「やれそうにないという世間のイメージに風穴を開けたい」

「我々が市場を創り出していくのだから、アナリストの市場予測は関係ない」

「起業家にとって大切なことは風を読むことだ。風が吹けば豚でも飛べる」

- 7/7 雑誌の特集記事を校了したので追記します
いろいろな方のお話をお伺いして、ドローンビジネスはこれからだと実感しました。
特に、今スタートアップ(ベンチャー)が、最も力を発揮出来るテーマだと思います。
すでに規模の経済の段階に入ってしまった映像空撮用ドローン単体のビジネスの次は、新しいアプリケーションを開拓する勝負になる。市場の潜在ニーズをいち早く発見し、専用のドローンや作業プログラムや、データ処理などの周辺のサービスなどを統合したアプリケーションを提供することによって、ニーズを顕在化させて市場を創造するのだ。
お忙しいところをインタビューに応じていただいた方々、本当にありがとうございました。
川手恭輔
 
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