デザイン思考で行こう!

Life will find a way, we'll find a way Technology lives.

2017年02月

2月2日にSnapchatを運営する米国Snap社(昨年の9月にSnapchatから社名変更)が、ニューヨーク証券取引所にIPO(株式の上場)を申請しました。その申請書類の表紙には「Snap社はカメラの会社です。私たちはカメラを再発明することによって、人々の生活やコミュニケーションの手段をより良いものにできると信じています。私たちの製品は人々が自己表現し、瞬間を生き、世界を知り、共に楽しむことを支援します」という感じのことが書かれています。

もちろんSnap社は(いわゆる)カメラの会社ではありません。昨年、サングラス型のビデオカメラSpectaclesを発売しましたが、それを指してハードウェアの会社だと言っているわけでもないでしょう。

Snap社が再発明するカメラとはハードウェアではなく、Snapchatという「すぐに消える写真や動画」でコミュニケーションを楽しむための新しい手段を意味しています。それによって、人々の生活やコミュニケーションの手段をより良いものにすると言っているのです。そのためにスマートフォン(のカメラ)では不十分ならば、Spectaclesのような独自のハードウェアを提供することもあるでしょう。しかし、それはSnapchatというソフトウェアがあってのハードウェアです。このように「カメラの再発明」は、ソフトウェア・ファーストで考えなければなりません。

-- デジカメ市場はスマホに破壊されたという嘘(Wedge Infinity)

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2月23日(木)に、TOKYO FMの「TIME LINE」という番組にちょっとだけ出演しました。

木曜日のパーソナリティーは人気コラムニスト小田嶋隆さんで、「トランプ大統領を考察するSP企画」の週の「ドナルド・トランプの移民政策によって加速する『人工知能』」というタイトル、そして「世界の未来を占うキーワード『人工知能』、同じく『ドナルド・トランプ』、両者を掛け合わせた時どのような未来が見えてくるのか?」というテーマに、私なりの考えをお話ししました。

「人工知能」と「ドナルド・トランプ」に共通するキーワードは「雇用」です。前者は破壊者であり、後者は創造者として期待されています。私は「経済最優先と競争至上主義の政治で落ちこぼれた中間層の期待」という観点から次のように考えました。 

自動化によって落ちこぼれた中間層

ドナルド・トランプは選挙活動中に「雇用の創出」を強く訴え、「移民政策」を公約として掲げ、大統領に就任してからは製造業に対して国内回帰を強要してきました。それに屈したフォードは、メキシコに工場を建設する計画を撤回し、フィアット・クライスラーはミシガン州とオハイオ州の工場に10億ドルを投じ、2000人を追加雇用する計画を発表しました。

しかしWedge2月号のトランプ特集で、オハイオ州立大のエドワード・ヒル教授は「1979年から2015年の36年で米国の製造業で約700万人の雇用が失われたが、その8割強は自動化によるもので、中国など海外に流れた雇用は2割以下だ」と言っています。コンピュータによる自動化が、米国内の多くの雇用を奪ってきたのです。

コンピュータという技術革新が、それまで中間層と呼ばれていた労働者を、必要とされるスキルのある労働者と、低熟練、低教育の労働者に二分化しました。さらに後者はヒスパニック系との低賃金の競争になり、それによって中所得層から転落したと考える(主に)白人を「落ちこぼれた中間層」と呼ぶことにします。

一方で米国の雇用は年々改善しており、年に1〜2万人自然増があります。失業率は2016年は4.9%と、近年の最悪値2010年の9.6%から大きく改善し、2007年の4.5%に近づいています(参考:日本は2016年 3.2%)。雇用が奪われるといっても、問題は失業ではなく、より低賃金の仕事に従事しなければならなくなっているということです。落ちこぼれた中間層が閉塞感に陥っている。米国の2015年の平均収入は5万6516ドル、最近のピークであった1999年の5万7909ドルを一度も上回っていないのです。

経済優先と競争至上主義の政治

その落ちこぼれた中間層は、オバマ前大統領の就任演説の「Change Yes We Can!」という言葉に期待したことでしょう。

その政権の最後、昨年末にホワイトハウスは『人工知能、自動化、そして経済』というレポートを発行しました。 そこでは「コンピュータとインターネットによる技術革新が、労働市場を左右してきたという近年の傾向が、人工知能によってさらに加速する」と報告し、「労働生産性の上昇が賃金上昇につながらなければ、人工知能による自動化で得られる大きな経済的利益は、ごく一部の人のものになり、経済的格差がさらに拡大する可能性がある」と警告しています。

しかし驚いたことにレポートは、「生産性と賃金の間には強い関係あり、人工知能の活用が拡大することによって幅広い労働者の賃金と余暇時間が増加する」と、あまりにも楽観的なまとめをし、それを実現するための政策や制度について次の3つの戦略を掲げました。
  • 多くの利益のために人工知能に投資し開発する
  • 将来の仕事のためにアメリカ人を教育し訓練する
  • 労働者の転職を支援し労働者が経済成長を幅広く共有できるようにする
最初のものは経済最優先と競争至上主義そのもので、残りの2つが経済的格差の拡大の問題に対処する戦略ですが、その内容は具体性に乏しく対症療法的です。実際に、そのために米国政府が投資している費用はGDPの0.1%(2014年)に過ぎず、他のOECD加盟国の平均値0.6%に比べると非常に低いものです(図もホワイトハウスのレポートより)。オバマ政権も、米国の経済優先と競争至上主義の政治を変えることはできませんでした。
Public Expenditure

不正移民の排除

ドナルド・トランプが選挙期間中に公約として掲げた移民政策「 IMMIGRATION REFORM THAT WILL MAKE AMERICA GREAT AGAIN」の3つの基本方針は次のようなものです。
  • メキシコに壁の金を支払わせる
  • 合衆国の法律と憲法を守る
  • アメリカ人労働者の雇用を優先する
米国の不正移民の数は2014年の数値で1110万人で、全人口の3.5%(ピークは2007年の1220万人4%)にあたりますが、米国の失業者、求職者を含む民間労働力に占める割合は5%になっています。特に農業では26%、建設業では15%と、その割合は大きくなっています。不正移民の2/3は、すでに10年以上米国に居住しているといいます(出所:5 facts about illegal immigration in the U.S.)。

基本方針の上の2つは不正移民を排除をしようというものですが、不正移民にはFLSA(賃金・労働時間法)が適用されないので、これまで不正移民が従事してきた仕事は非常に低賃金になってしまっています。ほんとうに不正移民が排除されてしまえば、そのよう仕事の働き手がいなくなります。ここは自動化も侵食しない領域です。

人工知能の破壊力

製造業の国内回帰や移民の排斥によって、FLSAで保護されるアメリカ人労働者を雇用することになれば、製造原価の労務費を拡大させます。例えば、中国で生産されているiPhoneを米国内で生産することになったら、台数では10%程度であるにも関わらず、利益では90%のシェアを誇るアップルのビジネスは成り立ちません。iPhoneが米国内で生産されるとは思いませんが、労務費の削減は製造業の大きな課題です。

工場における自動化は投資効果を把握することが容易なこともあって、自動車製造、金属製品、医薬品、食品加工、倉庫などのさまざまな産業で積極的に導入されてきました。投資効果が望めない工程や、技術的に難しい分野が人手に頼っています。しかし、それらも人工知能による技術革新が進み、対労務費の投資効果が顕在化すれば自動化が進むはずです。

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これまで、技術革新は雇用を破壊するだけでなく、新たな雇用を創造するという共通の理解がありました。しかし人工知能の破壊力は絶大です。例えばホワイトハウスのレポートでは、自動運転によって220万人から310万人の雇用が奪われるだろうと予測しています。これには特別な運転免許が必要で、比較的高給の超大型トラックの運転手170万人が含まれています。果たして、それに代わる雇用を生み出すことができるのでしょうか。

期待は(再び)裏切られ分断が残る

人工知能には大きな投資が必要ですので、それは資本家や経営者のものです。彼らがそこから得られる利益を独占しようとするならば、そしてそれを政府が放置するならば、経済格差はさらに拡大します。これは米国だけの問題ではありません。

ドナルド・トランプが移民政策を強引に推し進めたとしても、人工知能による雇用の破壊がそれを上回り、最終的に、落ちこぼれた中間層の最後の期待は裏切られることになるように思います。

強引な移民政策による政治的な分断と、経済格差の拡大による富裕層とそうでない者との経済的な分断、その2つの大きな分断によってアメリカはどうなるのでしょう。アメリカ社会はそれを放置するのでしょうか。アメリカという複雑で巨大な国家だけに、それが日本や世界に及ぼす負の影響は計り知れません。

 

このコラムはWedge Infinityに寄稿した「AIを加速させるトランプの移民政策」と多くの部分が重複します。2016年12月20日にアメリカ合衆国大統領行政府(Executive Office of the President)が公開した『Artificial Intelligence, Automation, and the Economy』は米国政府の著作物でパブリックドメインとなっています。この要約(Executive Summary)部分の抄訳を「AIを加速させるトランプの移民政策」の最後に掲載してありますので、ご興味があればこちらをごらんください。

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年初にラスベガスで開催されたCES2017では、アマゾンのAI技術が自動車や冷蔵庫などの多くの製品やサービスに搭載されたと報じられた。機械学習によって精度や効率を高めた画像認識や音声認識などのソフトウェアは、インターネットサービスの画像検索や、音声によるスマートフォンの操作や、Eコマースの商品のおすすめなどにも応用されている。

アマゾンのAlexaとは何者か?(Wedge Infinity) 

Alexa Skills Kit や Alexa Voice Service を使い倒して、ボイスインタラクションという新しいプラットフォーム上の製品やサービスを考えましょう! Facebook も Uber も Instagram も Snapchat もスマートフォンというプラットフォームがあってこそのサービスです。そう考えれば、大きな可能性が広がっていると思えるはずです。ただし、Alexaに冷蔵庫を繋げるとかの陳腐なものはダメです。他のプラットフォームではできなかったこと、考えられなかったこと、ボイスインタラクションならではの何かです。

ソニーの方への提案(?)も書きました、こんな感じです。イヤピース自体はそのままで、ちょっと発想を変えるだけですごく面白いものになります  ^^;
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アップルが昨年末に発売を開始したAirPodsは、iPodとiPhoneの次の、そしてジョブズ後のアップルにとって初めての「発明」になる可能性を秘めている。

iPodsは音楽プレイヤーを再発明し、iPhoneは電話を再発明した。iPodにはクリックホイール、iPhoneにはタッチパネルという、それぞれの再発明を可能にしたユーザーインターフェースの革新技術があった。AirPodsはiPhoneを再発明できるが、それにはSiriというユーザーインターフェースを賢くする必要がある。


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