昨年末に中国・深圳のスタートアップやアクセラレーターを訪問して話を聞いてきました。ほんの数日の滞在でしたが、日本の戦後にあった、熱に浮かされたような混沌としたエネルギーを感じました。

シリコンバレーのスタートアップのエコシステムに欠けていた、ものづくりのためのサプライチェーンを補完する形で「ハードウェアのシリコンバレー」と呼ばれるようになった深圳は、さらに「デザインド・イン・カリフォルニア、メイド・イン・チャイナ」という構図から脱却して独自のエコシステムを構築しようとしています。

かつてのメイド・イン・ジャパンは、メイド・イン・チャイナに取って代わられました。もちろんメイド・イン・ジャパンにも、まだまだ強みはあります。しかし、すでに中国は国家戦略として、メイド・イン・チャイナ(中国で製造)からデザインド・イン・チャイナ(中国で創造)への転換を打ち出し、新しい価値の創造に向かっているのです。

日本のものづくりも「もの造り」から「もの創り」に変わる必要があります。月刊Wedgeの1月号で、「日本のものづくりを復活させるには、既存事業の製品を企画し開発するプロセスに、製品のコンセプトを再定義して新しい価値を創造するステップを組み込む必要がある」と提言し、その取り組みを「リデザインド・イン・ジャパン」と呼びました。

「アップルは電話を再発明する」でおなじみの「再発明(リインベント)」はマーケティング用語ですが、リデザインはそのプロセス(方法論)です。アップルは電話(iPhone)や携帯音楽プレーヤー(iPod)をリデザインしたのです。

既存事業の製品をリデザインする。「既存事業」とは、他社の既存事業を含みます。他社の既存事業の製品であれば、アップルのように破壊的イノベーションを仕掛けることになりますが、自社の製品か他社の製品かは、あまり重要なことではありません。

なぜ既存事業の製品(のリデザイン)なのか。それは、すでに大きな市場、多くの顧客を獲得しているからです。製品のイノベーションというと、それまでまったく存在しなかった製品を発明することと考えがちですが、人々の生活に大きな影響を与えるような製品は、iPhoneやiPodのように既存の製品の置き換えるものであることが多いのです。

人々の基本的なニーズは不変で、技術によってその手段が変化してきました。その時点で利用可能な技術によって、満たすことが可能なレベルには限界があります。日本のものづくりは、技術の進化によって、そのニーズをどこまで満たすことができるかを追求してきました。リデザインとは、その基本的なニーズに立ち戻って、新しい技術で、それをどのように満たすことができるかをゼロから考え直すことです。

ラスベガスで開催されたCESで、今年の3月で創業100年を迎える「家電メーカー」パナソニックのブースには、家電が出品されていなかったようです。
何の会社なのか……。それは正直言って私も自問自答している。創業者が始めた家電事業の存在感が大きいため、家電が主軸ではないと言った途端に喪失感があるのはぬぐいきれない。(津賀一宏社長)
2018/1/12 日本経済新聞 電子版
戦後の「混沌」から生まれた(再生した)、パナソニックやソニーなどの日本の「ものづくり企業」は、一般消費者向けの最終製品をつくるのをあきらめ、スマートフォンや自動車などの部品メーカーへ転身しようとしています。しかし、白物家電や、テレビやオーディオ機器などを使う人々の基本的なニーズがなくなることはありません。それらの製品をリデザインすることによって、津賀社長の悩みを解決することができるのではと思うのです。


Wedge (ウェッジ) 2018年 2月号 [雑誌]
Wedge編集部
株式会社ウェッジ
2018-01-20






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