6年ほど前に「カメラのほんとうのイノベーションはこれからだ!」という記事を書きました。当時、米国系テック系の某有名ウェブメディアでの記事連載のお話があって、この記事を持ち込んだところ、当時の編集長曰く「いまさらオワコン(これもすでに死語)の話は...」その後、音信不通になった記憶があります。

6年が経過し、その間のスマホのカメラの技術の進歩はめざましいものでしたが、カメラメーカーは、カメラのイノベーションを起こすことができませんでした。
クリステンセンのイノベーションのジレンマは、安定した強固なバリューネットワークを持つ企業に生じるものであったが、デジタル時代においては、経営者はそもそも安定した強固なバリューネットワークというものを構築すべきか否かという判断を迫られている。フィルムのエコシステムは100年以上にわたって多くの企業に利益をもたらしたが、フィルムメーカーに代わって写真産業の頂点に立ったカメラメーカーの業績は10年そこそこで陰りが見え始めている。(カメラのほんとうのイノベーションはこれからだ!)
陰りが見え始めたと書いた2013年のカメラの出荷台数は約6100万台、昨年は、その約1/3の1950万台余りにまで落ち込みました。ピーク時と比べれば1/5という数字です。今年は、さらにその20%減で推移しています。(データは、カメラ映像機器工業会の「デジタルカメラ統計」をご覧ください)

確かに、何をいまさらの「カメラのイノベーション」ですが、私は、ほぼすべての人が「ムリ」と思っていることの答えを見つけることが大好きです。いまは、(自動運転の)ロボットタクシーの立ち上げに没頭していますが、それと同じぐらい「カメラのイノベーション」への挑戦は面白いと思うのです。

私の答えは、「ママカメラ、パパカメラ、タビカメラ、サンポカメラを創る」ということです。

そんなものは、すでにいくらでもあると言われると思います。しかし、それらは、デザインや機能が、例えば「ママが子供の写真を撮る」ために「適して」いるということに過ぎません。「ママが子供の写真を撮る」ためのカメラをつくったのではなく、「適した」機能やデザインを持ったカメラを、マーケティングとして「ママカメラ」というコンセプトを後付けしたものです。

「子供の写真を撮る」ことがママの目的ではありません。何か別の目的があって「子供の写真を撮る」のです。いまの「ママカメラ」で、その目的を達成できているでしょうか?カメラメーカーの人が、その疑問からカメラを考え直すことができれば「カメラのイノベーション」は可能だと思います。

スマホで写真を撮る人たちには、様々な目的があります。スマホカメラの性能がどんなに向上しても、カメラの機能だけでは、それらの目的を達成することはできません。インスタグラムやフェースブックやスナップチャットなどは、カメラを再発明してイノベーションを起こしたのです。

世界中の人々は、写真を撮ることが大好きです。これは変わることはないでしょう。それが、誰もが「ムリ」だと思っている「カメラのイノベーション」への挑戦が面白いという理由です。人々の基本的なニーズは不変で、新しく生まれた技術によって、その手段だけが変化して行きます。技術の進化が無限であれば、人々が何かをする手段も無限に変化する可能性があります。スマホカメラとインスタグラムで終わりではないのです。

カメラメーカーの方にひとつ提案があります。

社内の、カメラの事業とはなるべく離れた部門の、就学前のお子さんを育てているママやパパで、ミクシィが運営する家族アルバムアプリ『みてね』を使っている方を20名とか30名集めてください。お昼をご用意して、例えば11時から13時ぐらいの時間で、5人ずつぐらいのグループにして、子供の写真をどんなときに、どれぐらい撮っているのか。そして『みてね』をどんな風に使っているのか。なぜ『みてね』を使っているのか。そんなことを話し合ってもらってください。

カメラ事業の方は、各グループに一人か二人同席して、その会話を観察してください。会話が停滞したり大きく脱線したときのために、あらかじめ用意した質問を投げかける以外は発言を控えます。30分ぐらいでグループをシャッフルします。観察者は動かずに、メモもとらずにひたすら観察してください。

ママカメラとパパカメラの答えが必ずあります。ママカメラとパパカメラはまったく違うはずです。それは、いわゆるカメラというハードウェアだけではないことに気づくはずです。インスタグラムもフェースブックもスナップチャットも、イノベーション後のカメラなのです。

10人の観察者のうち、8人は気づかないかもしれません。あるいは間違った答えを見つけるかもしれません。そして1人か2人は、いままでつくってきたカメラがなぜ使われなくなってしまったかに、なんとなく気づくでしょう。あとは、その1人か2人が「カメラのイノベーション」に挑戦しようと思うかです。それは、さらに10人にひとり、あるいは100人にひとりかもしれません。

しかし、「カメラのイノベーション」はいつでも可能です。