世界経済フォーラムが、マッキンゼー・アンド・カンパニーと連携して作成したレポート『Transforming Rural Mobility in Japan and the World(日本と世界の地方のモビリティの変革)』が、1月16日に公開されていました。

その冒頭で「日本の地方のモビリティに対する需要の減少が、モビリティシステムに深刻な経済的負担をかけています。地方のバス会社の85%が損益分岐点を下回っています。中国地方の60%の鉄道の収益は、営業コストの50%を下回っています。この低収益性は人口密度が低いことによって引き起こされる構造的な問題であるため、鉄道事業者に運営効率の向上を促しても、本質的な問題解決になりません。人口の減少だけでも、2040年までに地方の交通収益性がさらに5-10%低下する可能性があります」という問題提起をしています。 

そして、この問題の解決に取り組むために「DRIVER」という地方のモビリティのためのソリューションフレームワークを提案しています。
Dynamic route: 路線バスのように決められたルートを走るのではなく、オンデマンドで出発地点に迎えにきて目的地まで送ってくれるモビリティサービス。
Resident-involved: 輸送業務に住民組織と非政府組織を関与させる。
Intermodal: サービスとしてのモビリティ(MaaS)アプリケーションを使用して、公共交通機関モード全体で支払い、予約、スケジュールの調整を統合することで、顧客体験を向上させる。
Versatile: モビリティサービスは、移動サービスそのものだけで利益を得ようとするだけでなく、人々が移動することによって、直接的間接的に利益を得る他の業界とのパートナーシップを考慮して、より大きな利益プールにアクセスする必要がある。 
Efficient: 既存のサービスを改善し、新しいソリューションを活用してより効率的にする。
Rightsized: 需要の減少に対応するために、適正な規模の交通モードを選択し、収益性と顧客満足度の向上を前提にモビリティミックスを調整する。
地域の人口の減少によってモビリティへの需要が減り、モビリティサービスの収益が減り赤字が拡大するという構造。行政からの追加支援がなければ自ずとサービスレベルが低下することになります。そして、地域のモビリティのサービスレベルの低下は、さらなる人口減少を招く一因となります。

DRIVERは、その悪循環を断つためのソリューションフレームワークです。レポートは、どの要素に優先して取り組むべきかは地域の実情によって異なるとしていますが、どの地域においても優先すべきはサービスレベルを向上させることだと思います。特に、適正な規模の交通モードを選択し、モビリティミックスを調整すること(Rightsized)が必要ではないかと。

2018年6月に国土交通省 国土交通政策研究所が発表した『多様な地域公共交通サービスの導入状況に関する調査研究』では、地方のモビリティを確保・維持するための施策のひとつである「コミュニティバスやデマンド交通の効果的な導入」に焦点を当て、何がその利用者増に貢献するかを調査研究しています。

デマンド交通とは、路線やダイヤをあらかじめ定めないなど、利用者のニーズに応じて柔軟に運行するバス又は乗合タクシーを指し、コミュニティバスは、交通空白地域・不便地域の解消を図るため、市区町村自らバス事業者として、またはバス事業者に委託して路線定期運行するバスを指しています。

デマンド交通の方がコミュニティバスより潜在的な需要があるものの、デマンド交通は運営が厳しく、バス停から自宅などの移動の起点・終点までの距離や待ち時間などの短縮といったサービスレベルの向上が難しい。結果的にコミュニティバスの運行の方が多くなっている。そして、デマンド交通の方が増加後減少の割合が多くなっており、導入後の利用者数を増加させるための改善においても、コミュニティバスよりうまくいっていないという、デマンド交通の運行継続の難しさが報告されています。

Rightsizedは、鉄道や路線バス、そしてコミュニティバスやデマンド交通などの組み合わせ(モビリティミックス)を、地域の需要に合わせて調整し最適化します。モビリティミックスにおいてラストマイルを担うモビリティはDynamic routeが理想です。電話や配車アプリでタクシーを呼び出せばDynamic routeになりますが、既存のタクシーを地方のモビリティミックスに組み込むことは難しいと思います。

日本のタクシードライバーの給与の大部分は、売上げの50%から60%の歩合制になっており変動費に分類されます。そのため、変動費を削減してタクシー1台当たりの限界利益率(限界利益/売上)を向上させることは難しく、利益を増やすためには車両数を増やさなければなりませんが、タクシー事業には運賃と車両台数の規制がかけられています。

ロボット(無人)タクシーは、その変動費を大幅に削減することができます。しかし、一般の乗用車を自律走行可能にしたタクシー用車両は非常に高価(数千万円)です。それでは、地域に必要十分な台数のロボットタクシーを投入することは難しい。それに、ラストマイルには、高速道路を走行するような車両は必要ありません。

私たち(PerceptIn)は、コンピュータビジョンを中心にした独自のセンサー統合技術による、低速の自律走行電動車(LSEV)を1/10程度の価格で提供します。この車両を使用する「マイクロ・ロボットタクシー」は、地方のモビリティミックスのDynamic routeのためにデザインしたモビリティサービスです。

世界経済フォーラムのレポートは、「今後10年間で過疎地域が世界中に広がるにつれて、地方のモビリティの重要性が増すだろう。そして、新しいソリューションの実現性も重要になる。日本および世界中で、地方のモビリティ市場は広く開かれており競合も少ない。そして、さらに重要なことは、ユーザーがそれを本当に必要としていることだ」と結論づけていますが、マイクロ・ロボットタクシーの事業化を目指している私たちの考えと完全に一致しています。

Dynamic routeのモビリティサービスは既存のタクシーとの競合になりますが、デマンド交通も競合モード・路線との調整をした方が、より利用者数が増えるという調査結果が出ています。

複雑な社会問題の解決のためには、関係するすべてのプレーヤーが集まり、アジェンダを明確にし、大きなインパクトが起こせるように互いに補い合って、問題解決のための活動を実行するコレクティブ・インパクトというアプローチが必要です。レポートも「技術と情熱を持ったより多くのプレーヤーがこの問題に取り組み、より良い成功事例を一緒に開発するために大義に加わることを切望する」と結んでいます。