大企業(特に製造業)のイノベーションについて、多くの人々は悲観的だ。その理由については、「イノベーションのジレンマ」をはじめとしてすでに多くの分析がなされている。例えば、成功した企業がさらなる成長のために最適化した組織が、病原菌が侵入した時の白血球のようにイノベーションを拒絶し死滅させるという分析だ。
企業の成長戦略についてはアンゾフの成長マトリックで俯瞰することができる。

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このマトリックスではイノベーションという観点での分類はされていないように見えるが、アンゾフは多角化についてさらに水平型、垂直型、集中型、集成型という4つの分類をしている。このうちの水平型と集中型はイノベーションの戦略として、成長戦略に組み込むことができるのではないかと思う。製造業のイノベーション戦略を考えるには、製品と市場という軸を、それぞれの上位概念である技術とドメインという軸で表すとわかりやすい。すなわちイノベーションのマトリックスだ。

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,魯▲鵐哨佞水平型の多角化と呼んでいるものに近い。すでに獲得している経営資源やバリューネットワークの多くを活用してプロダクトのイノベーションを行う。写真というドメインにおいてカメラメーカーが新しいデジタル技術を導入し、フィルムカメラからデジタルカメラへのプロダクトイノベーションに成功した事例がある。
△麓社の既存の製品や保有技術に関連した新しい製品によって、別のドメインに参入するというアンゾフの集中型多角化だ。Appleが自社のコンピューター、OS、アプリケーションソフトウェアという製品・技術に関連したiPodという製品によって音楽という新しいドメインに参入したケースがあてはまる。
自社にない新しい技術を獲得して新しいドメインへ参入する、いわゆるコングロマリット戦略は経営のより上位レベルでM&Aなどのオプションを含めて検討されるものであり、上記の2つのイノベーション戦略と同じ次元で考えられるものではない。

いったん鉄道事業のためのバリューネットワークを忘れて、「輸送」という顧客の基本ニーズに立ち戻り、そこからその時点で利用可能な技術やインフラを前提に、その「輸送」というドメインにおける新たなバリューを定義する。そしてそのためのバリューネットワークを再構築する。

前回の記事からの引用だが、これは,鮃圓Δ燭瓩旅佑方だ。そしてデザイン思考のアプローチが得意とするところでもある。再三の登場になるが「デジタルビジネスデザインの進め方」も、デザイン思考のアプローチの過程に組み込むべきステップだ。
  1. デジタルコンバージェンスを可能にする技術やインフラを定義する
  2. それによって可能になる「新しいユーザー体験」を描く
  3. バリュープロポジションを定義する
  4. それを実現する製品「ハード」「ソフト」「サービス」を再定義する 
製造業といえども、デジタル化の流れの中でソフトウェアやWebサービスをプロダクトに組み込むことなくして、新しい価値を創出することは困難だ。

では△呂匹Δ世蹐Αその答えを導くための手法といったものがあるのだろうか。
その方法ついては別の記事でまとめてみようと思うが、どこかに答えやヒントが紹介されているのだろうか。あるいは,亮茲蠢箸澆鮃圓辰討い訝罎猫△療えを見出すことがあるやもしれない。

イノベーションには自社の事業をイノベーションするという意味と、市場にイノベーションを起こすという意味の2つがある。もちろん、企業(事業)にとってのイノベーションの狙いは前者だ。それによって企業が生き残り、その事業が拡大し成長することが目的だ。そのイノベーションが結果的に市場にイノベーションを起こし、それが他社にとって破壊的なものになったとしても、それは結果であり目的ではない。
イノベーションのマトリックスの始点に飽和・限界と書いたが、それが起こってからイノベーションに取り組んだのでは遅い。アンゾフのマトリックスの市場浸透、製品開発、市場開拓の3つの成長戦略には必ず飽和・限界があることを認識する必要がある。

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