どうやってイノベーションを起こしたかということについては数多くの本で事例や分析が紹介されている。そしてイノベーションを起こすための方法論やプロセス論の議論も活発で、数多くのコンサルティングも存在する。アイデアをプロダクトやサービスとして実現し、企業の中で事業化したり起業するためのノウハウもあふれている。
まったく新しいユーザー体験を提供し人々の生活を変えるようなラディカルなイノベーションはそう簡単にできることではない。しかし、その可能性は無限に存在すると信じている。デジタル時代においては、ひとつのイノベーションによって得たアドバンテージを維持できる時間は極端に短くなっている。そのアドバンテージを維持するためには次のイノベーションが必要であり、第三者にとってもそのドメインで次のイノベーションを起こすチャンスは残されている。

デザイン思考という考え方は好きだ。しかしそれによって可能になったイノベーションの事例を見つけることができない。ノーマンはデザイン思考ではラディカルなイノベーションを生み出すことはできないと言っているが、僕はデザイン思考による取り組みの中で生まれるアイデアが勝負だと思っている。そのアイデアが画期的な形状のドアノブなのか、ドアが一部の構成要素に過ぎない環境自体を再定義するものなのかの違いだと思う。
それはきっと寄せ集め(寄り集まり)のプロジェクトやブレインストーミングからは生まれない。偶然のような思いつきと、それを実現しようとする変質的で偏執的な情熱によってしか生まれない。

それではみなさん、よいお年をお迎えください。川手恭輔