我々が目指すスマートとは

スマートシティあるいはスマートモビリティのスマートとはなんでしょう。ウィーン工科大学のチームは、都市開発の6つの主要分野でヨーロッパの主要都市を評価しました。
  • Smart Economy(経済)
  • Smart Mobility(交通)
  • Smart Environment(環境)
  • Smart People(教育)
  • Smart Living(生活)
  • Smart Government(行政)
先端技術を駆使して、これらの分野でのインフラやサービスを向上させて、暮らしやすい都市を形成していくことがスマートシティの目指すところだと思います。

しかし、スマートシティへの関心は、都市の大規模な再開発という魅力的なビジネスが伴う場所に集まっています。ここでも地域格差が拡大してしまうのでしょうか。

規模にかかわらず、先進的な取り組みをしている地方の市や町の自治体や関連する組織は、これらのいくつかの、地域ごとにニーズや実施形態が異なる「スマート化」に取り組み、成果をあげています。しかし、スマートモビリティに関しては、その困難さの度合いが大きいのではないでしょうか。

スマートモビリティには、スマートフォンのアプリを使い、いろいろな交通手段を駆使して効率的に移動するといったイメージがあります。それにはある程度の情報リテラシーが必要です。そもそも、交通手段の選択肢すらない地域も少なくありません。また、交通手段には、シェアリングの自転車や、将来的には電動のキックスクーターなどが含まれると思いますが、それらを利用できない人や状況も多いと思います。

私たちが提供しようとしている、アフターコロナの地方の新しいスマートモビリティは、いわゆる「交通弱者」のためだけのものではありません。英語に"vulnerable"(バルネラブル)という形容詞があります。困っていたり、支えが必要だったりする「状態」を指すようです。誰もが一時的または永続的に「バルネラブルな状態」になる可能性があります。

私たちは、移動について「バルネラブルな状態」の人にも優しい モビリティがスマートモビリティではないかと考えています。

人々の当然の権利としての生活交通


コロナ禍によって、地方のモビリティは、さらに危機的な状況になることが予想されます。緊急事態宣言の対象が全国に広がったことにより、例えば、路線バスの輸送人員が大幅に減少しました。「人の移動を減らす」ことが、国家的な要請であるにもかかわらず、「人の移動を支えなければならない」地域公共交通として、減便や運休ができずに赤字が大幅に拡大しました。

地方の公共交通を担うバスやタクシーなどの民間事業者の事業継続が困難になった場合、地域単位で交通が止まるリスクがあり、特に高齢化が進む地方部においては「交通崩壊」が「社会崩壊」を招きかねません。アフターコロナでは、全国の地方で生活交通の再構築が必要になるでしょう。

私たちが実用化を目指している低速のEVを使用した自動運転のタクシーサービスMopi(モピ)は、地方の人々の(生活交通)、人々による(自律的な)、人々のための(持続可能な)新しいモビリティを提供します。

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Mopi には次のような特徴があります。
  • 低速:時速20km以下(通常は10km程度)での走行は、乗客だけでなく歩行者にも優しく共存が可能です。
  • EV:言うまでもなく、EVは環境に優しいモビリティです。
  • 自動運転:タクシーの運用コストの大部分を占めるドライバーの人件費を大幅に削減することができます。「AIが人の仕事を奪う」と言われますが、地方ではドライバー不足が深刻です。
  • 2人乗り:新しい生活様式では、乗り合いではなくパーソナルな移動手段のニーズが高まると思われます。
  • タクシー:必要なときに呼べば迎えにきて、目的地にまっすぐ行くことができます。この利便性は、使いものになる生活交通として非常に重要です。
参考までに、日本の自家用車稼働率は4%(年間20日)ほど、平均の乗員は1.3人、一回の走行距離は5km未満が69%、3km未満が44%の短距離です。
It is rather for us to be here dedicated to the great task remaining before us―that mobility of the people, by the people, for the people, shall not perish from rural areas.

私たちの前に残されている大事業に、ここで身を捧げるべきは、むしろ私たち自身ですーそれは、人々の、人々による、人々のためのモビリティを地方地域から消滅させないためです。
これはリンカーンのゲティスバーグの演説の有名な一説の一部を切り取り、「政治」を「モビリティ」に、「世界」を「地方地域」に変えたものです。これが Mopi の語源です。

"goverment of the people" の "of" について、「人々に由来する」という解釈があります。"mobility of the people" には、地方地域の人々に由来する、当然の権利としての「生活交通」という意味を持たせたつもりです。

上で「交通弱者」という表現を使いましたが、「弱者」は「強者」との対立軸で生まれる言葉です。それは、生活道路を低速で走行する自動運転の車両に対する社会的受容性の観点からも望ましいものではありません。より多くの人に、誰もが一時的または永続的に「バルネラブルな状態」になる可能性があるとの共通認識を持ち、その誰もが利用できる「人々の生活交通」の必要性を理解していただきたいと願う次第です。

官民ITS構想・ロードマップ

7月15日に、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が「官民ITS構想・ロードマップ」の2020年度版の案を発表しました。
2.2.1 地方部における将来課題とモビリティニーズ

【事業者視点】

人口減少や高齢化が進む中、トラックやバス、タクシーなどの移動・物流サービスの担い手の不足及び高齢化が深刻である。さらに、生活社会インフラや住宅が 散在しているため、積載率が低いトラックや乗車率の低い交通機関が運行するこ とになり、輸送効率が悪い。結果的に、人流・物流事業者の収益性が低下する中、 一層人材が集まらず、事業の継続が困難になる。
 
このため、散在する住宅や生活社会インフラへヒトやモノを効率的に輸送するサ ービスの提供が必要である。手段としては、既存のバスやタクシー等に限らず、自動運転バスや小型自動運転車、デマンド交通等の新たな技術やシステムを活用した新規のモビリティの導入も考慮しながら、輸送の効率化を図る必要がある。
自動運転に係る「移動サービス」のロードマップでは、混在空間(生活道路等)における低速の小型モビリティサービスは次のようになっています。

2020〜2022頃:遠隔操作及び監視 
  • 一ヶ所程度で遠隔操作及び監視有りの自動運転サービスを開始し、徐々に対象を拡大
  • 1:Nの遠隔操作及び監視を実施
2023〜2025頃:遠隔監視のみ
  • 数カ所で遠隔監視のみの自動運転サービスを開始し、徐々に対象を拡大
  • 1:Nの遠隔監視を実施
2026〜2030頃:遠隔監視のみ
  •  2025年度目処に十ヶ所以上で遠隔監視のみの自動運転が普及
  • 遠隔監視におけるN数を増加
コロナ禍で少し停滞しましたが、「2020〜2022頃」の目標の実現に向けた取り組みを再開・加速したいと思います。