D.A.ノーマンの「誰のためのデザイン?」の改訂版が発売された。



彼のエッセイ"Technology First, Needs Last"と "Human-Centered Design Considered Harmful" とそれに続くいくつかの投稿で提唱された "Activity-Centered Design" がどのように説明されているかが気になって、ざっと読んでみた。
余談だが、最近はKindle版の書籍を購入するようになり自宅ではiPad、外出先ではiPhoneのKindleアプリで読んでいるのだが非常に便利だ。デジタル・マーケティングやイノベーション関連ばかり乱読しているのでどうしても英文の本ばかりになるが、わからない(多くの)単語をタップするだけで和訳が表示されるのでスムースに読み進むことができる。気になるフレーズはマーカーで印をつけておけば、いつでも一覧表示から確認してその部分にジャンプすることもできる。読み進んだデバイスでの最終ページは、もうひとつのデバイスで開いたときに同期をしてくれる。この新しいユーザー体験が、ついAmazonに行って次の本を探したり、O'Reilly Mediaから毎日のように届くお勧めをクリックしてしまう僕の行動を生み出している。

第6章 Design Thinking と第7章 Design in the World of Business は完全に新しく追加されたとなっている。手元にオリジナルバージョンがなく(これも誰かに貸したはずだが)かなり昔に読んだので、その前の章の内容もあまり覚えていなかったが、読んでいるうちになんとなく思い出した。"Activity-Centered Design"は"Human-Centered Design"を否定して取って代わるような考え方としてではなく、"Human-Centered Design"の方法論として説明されているという印象だ。すなわち文化などによって異なる「個人」ではなく、人々の「行動」によってデザインを決めるべきだということ。"ACTIVITY-CENTERED VERSUS HUMAN-CENTERED DESIGN"という見出しの文節もあるのだが、全体を通してHCDの考え方は変わっていないように思う。
Designers first spend time determining what basic, fundamental (root) issue needs to be addressed. They don't try to search for a solution until they have determined the real problem, and even then, instead of solving that problem, they stop to consider a wide range of potential solutions. Only then will they finally converge upon their proposal. This process is called design thinking.

まずデザイナーは、 取り組むべき基本的で本質的な問題が何であるかを特定することに時間を費やす。そのほんとうの問題を特定するまで、その解決策を探すようなことはしない。さらに問題を特定した後でも、すぐにその問題を解決しようとするのではなく、立ち止まって広い視野で可能な解決策を広い視野で考える。そしてようやく自らの提案に集中する。このプロセスを「デザイン思考」と呼ぶ。
そしてHCDをデザイン思考のための強力な2つのツールの1つと位置付けている。もう1つは"The Double-Diamond Model of Design"と呼ばれ、問題の特定プロセスとその解決策を考えるプロセスにおいて、それぞれをいったん発散させて広い視点で客観的に考えてから結論に収束させるというものだ。そしてその2つのプロセスでHCDのデザイン手法
  1. Observation
  2. Idea generation
  3. Prototyping
  4. Testing
を繰り返して正しい結論を導く。この考え方はEric Riesの  "THE LEAN STARTUP"で提唱されているBuild-Measure-Learnの繰り返しによって、仮説としてのビジネスモデルを検証する手法と同じだ。また、そもそもデザイン思考という考え方を生み出したIDEOの"The Art of Innovation"で解説されている試行錯誤型アプローチとも(当然ながら)同じである。
ノーマンはHCDを否定しているのではなく、あまりにもそれを論理的に解釈したデザインやデザインの教育に対して警鐘を鳴らし、よりHuman-Centeredな取り組みをするべきだと訴えているように思える。

全体を通してHCDを実践はデザイナーの仕事として説明されているが、「ビジネスに携わる人がデザイナーをよく理解する必要などない。彼ら自身がデザイナーになる必要があるのだから。」というロジャー・マーティンの言葉で納得することにする。

この本を読んでいくつか気がついたことがある。この後、書いてみようと思っている。

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川手恭輔(Internet Born & Bred)